【解説】地価で見る久山町│令和7年は住宅地、商業地ともに好調、県道35号沿いが強い(R7地価公示)

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

糟屋郡久山町の概要とアクセス環境

糟屋郡久山町は、福岡市の北東に隣接する位置にあり、自然豊かな環境と都市近郊の利便性を兼ね備えた町です。

福岡I.C.をはじめとする高速道路網へのアクセスが良好であり、九州自動車道を利用すれば福岡市中心部だけでなく、九州各地への移動もスムーズに行えます。

県道35号線が町の主要な交通動脈となっており、沿道や背後には「コストコホールセール 久山倉庫店」、「トリアス久山」、「久原本家 総本店」、「天麩羅処ひらお 久山店」など、福岡都市圏の集客力を持つ商業施設が立ち並んでいます。

この交通利便性と生活利便施設の豊富さが、久山町の住宅地・商業地の地価を支える大きな要因となっているのです。

住宅地の地価動向

平均変動率は8.5%、堅調な上昇基調が続く

令和7年の地価公示において、久山町の住宅地の平均変動率は8.5%となりました。

前年の9.1%と比べるとわずかに伸び率は落ちたものの、それでも高水準を維持しており、住宅地市場が依然として活発であることを示しています。

平坦地では、小規模な住宅地開発やリノベーション再販事業が積極的に行われており、比較的高値での取引も確認されています。

最近では平坦地で坪当たり15万円から25万円程度の水準で取引されるケースも出てきており、住宅需要の強さがうかがえます。

平坦地と高台・傾斜地で明確な違い

久山町内では、立地条件による地価動向の違いがはっきりと表れています。

まず、平坦地については、生活利便性の高さや交通のしやすさから特に人気が高く、周辺市町と比較しても地価の割安感が意識され、需要が増加しています。

その結果、平坦地の地価はここ数年で著しい上昇を見せています。

一方、高台や傾斜地については、坂道があることや交通利便性にやや難があることから、平坦地ほどの需要はないものの、それでもじわりと地価は上昇してきています。

特に、自然環境を重視する層には、高台ならではの開放感や眺望の良さが評価される傾向にあります。

久山町の住宅市場では、こうした立地条件ごとの需要の違いをしっかり見極めることが重要になってきています。

商業地の地価動向

県道35号沿いが取引の中心か

久山町の商業地については、そもそも町内の商業地域が限定的であるため、取引件数自体は多くありません。

ただし、県道35号沿いの路線商業地では一定の取引が散見されており、特に流通業務系施設の立地が進んでいる状況です。

事業用定期借地権を利用した借地店舗が多く、土地そのものの売買は少ないものの、店舗の開業意欲は非常に高く、県道沿いの地価は底堅く推移しています。

推定取引価格は坪単価20万円から30万円程度とみられ、福岡市近郊の他エリアと比べても、なかなか健闘している水準と言えそうです。

福岡I.C.周辺で物流施設の進出が続く

商業地のもう一つの注目ポイントは、福岡I.C.に近い久原地区南西部一帯です。

このエリアでは、近年物流施設の進出が相次いでおり、流通拠点としての機能が急速に高まっています。

九州自動車道へのアクセスが良好であることに加え、比較的まとまった土地が確保できることから、大型物流施設や配送センターなどの建設が目立っています。

物流施設の集積は、エリア全体の商業地としての地位向上にもつながるため、今後は県道35号沿いだけでなく、久原地区周辺でも商業地価格の底上げが期待できそうです。

戸建住宅需要の動向

久山町における戸建住宅人気の背景

久山町では、自然豊かな環境と都市近郊の利便性を兼ね備えた立地特性が評価され、戸建住宅への需要が堅調に推移しています。

福岡市内と比較して土地価格が割安でありながらも、交通アクセスが良く、日常生活に必要な施設が一通りそろっているというバランスの良さが、大きな魅力となっています。

また、「トリアス久山」や「コストコホールセール 久山倉庫店」といった大型商業施設が近隣にあるため、買い物の利便性も高い点が一次取得層にとって安心材料となっています。

最近では、広めの敷地を活かしたゆったりとした戸建住宅プランも増えており、子育て世帯を中心に人気が続いている状況です。

地価上昇に伴う今後の懸念点

住宅地需要は堅調ですが、地価の上昇が続くことにより、今後は「割安感」が徐々に薄れていく可能性もあります。

福岡市内中心部との価格差が縮小してくると、久山町ならではのコストメリットが弱まるため、一定の需給バランスに変化が生じることも考えられます。

特に平坦地では、限られた供給地の取り合いが激化する可能性もあるため、土地選びの際は注意が必要になってきそうです。

商業施設の影響と町のブランド力

トリアス久山、コストコ、久原本家の存在感

久山町を語るうえで外せないのが、大型商業施設の存在です。

トリアス久山は、ショッピング、レジャー、飲食を一体化させた大型複合施設として長年親しまれており、地元住民だけでなく、広域からの集客力も持っています。

また、コストコホールセール 久山倉庫店は、全国的にも有名なコストコ日本1号店として知られており、その存在が久山町の知名度を一気に押し上げました。

さらに、久原本家 総本店も観光地化しており、食にこだわる層を中心に、根強い人気を誇っています。

こうした大型施設の集積は、単なる買い物需要を超えて、町全体のブランド力向上に大きく寄与しています。

地価へのプラス効果

これらの大型商業施設は、地価にも確実にプラスの効果をもたらしています。

県道35号沿いの商業地に限らず、周辺住宅地にも一定の地価押し上げ効果が波及しており、今後も引き続き町の資産価値向上に貢献していくとみられます。

まとめ

令和7年の地価公示結果を踏まえると、久山町の住宅地は平坦地を中心に非常に堅調な上昇基調を維持しており、商業地についても県道35号沿いを中心に底堅い動きを見せています。

特に、戸建住宅需要の強さと、流通・物流施設の進出による商業地のポテンシャルアップが目立つ一年だったと言えるでしょう。

今後も、福岡I.C.へのアクセスの良さや、豊かな自然環境、大型商業施設による利便性の高さといった久山町の魅力が住宅地・商業地双方の市場を支えていくと考えられます。

ただし、地価上昇に伴う割安感の薄れには一定の注意が必要であり、今後も市場動向を丁寧に見極めながら、不動産の取得・活用を進めていくことが大切です。

個人的には、コストコ=久山というイメージがすっかり定着しています。暮らしやすさを訴求できる点が久山の強みですね!


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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