【解説】地価で見る宗像市│住宅地は交通利便性の良否で地価は二極化(R7地価公示)

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

宗像市は福岡県北部に位置し、福岡市と北九州市の中間地点という地理的メリットを持つ市です。

自然と歴史に恵まれた地域でありながら、JR鹿児島本線や国道3号線沿いなど、交通利便性の高いエリアも数多く、近年では住宅地としての注目度も高まりつつあります。

令和7年地価公示(R7地価公示)においても、宗像市の住宅地・商業地ともに上昇傾向を示しており、とくに利便性に優れたエリアでは顕著な価格上昇が見られました。

この記事では、不動産鑑定士の視点から宗像市の地価動向を住宅地と商業地に分けて詳しく解説し、地域ごとの特徴や今後の見通しについても書きたいと思います。

目次

住宅地の地価動向|JR赤間駅周辺は安定した人気。郊外はやや停滞

R7の住宅地平均変動率は+5.9%。前年より上昇幅が拡大

宗像市の住宅地における平均変動率は+5.9%となり、前年の+4.8%と比較して上昇幅が拡大しました。

調査対象となった13ポイントのうち、大半の地点で前年を上回る変動率となっており、住宅需要の堅調さが感じられる内容となっています。

その一方で、住宅地の中でも「交通利便性」による二極化が進行している傾向も見逃せません。

JR赤間駅・JR東郷駅周辺は高評価

住宅地としての人気を集めているのが、JR鹿児島本線「赤間駅」や「東郷駅」の周辺地域です。

赤間駅は快速電車の停車駅であり、福岡市中心部や小倉方面へのアクセスが良好です。駅周辺にはマンションや戸建住宅の開発が進み、生活利便施設も充実しています。

赤間駅南口の「くりえいと宗像」には、サンリブを中心とする商業施設が集積しており、ビバモール赤間など郊外型の大型商業施設も生活利便性を支えています。

また、赤間駅周辺では再開発事業が計画されており、今後も駅周辺の価値はさらに高まる可能性があります。

郊外部では横ばい〜緩やかな上昇

一方で、赤間・東郷駅から距離のある地域、たとえば大穂地区、王丸地区などでは、交通利便性にやや課題があり、住宅地としての地価上昇幅は限定的です。

これらのエリアは、敷地が広く環境も落ち着いているため定住には向いているものの、高齢化や若年層の転出も見られ、開発圧力は強くありません。

特に公共交通機関へのアクセスが制限される地域では、マイカー依存が前提となるため、若年層や単身世帯にとっては選択肢に入りづらい傾向があります。

商業地の地価動向|駅前と国道沿いの動向が対照的

R7の商業地平均変動率は+4.6%。前年より上昇幅が拡大

宗像市における商業地の平均変動率は+4.6%と、前年の+3.3%から上昇幅が拡大しました。

商業地の調査対象地点は2ポイントと少ないものの、いずれも前年より高い上昇率を記録しています。

この数字からは、宗像市における事業用地の需要が、特に特定の立地条件において引き続き強いことが読み取れます。

JR赤間駅前の商業地は安定感あり

赤間駅前は都市計画に基づく区画整理が行われており、街路やインフラが整備されていることから、一定の繁華性が保たれています。

特に駅周辺には医療施設、金融機関、教育機関が集積しており、「生活拠点」としての機能が明確であることが、安定した地価形成につながっています。

また、福岡教育大学が近接していることも、駅周辺の賃貸需要を支える大きな要素となっており、店舗需要と住宅需要のバランスがとれたエリアといえるでしょう。

国道3号線沿いの商業地は依然として根強い人気

宗像市において商業地の価格を牽引しているのは、駅前よりもむしろ国道3号線沿いのロードサイド型の事業用地です。

幹線道路沿いの視認性・交通量の多さから、飲食店・ドラッグストア・大型物販店舗などが立地しやすく、引き続き高い需要があります。

「HOTEL AZ 福岡宗像店」のような宿泊施設や、「ビバモール赤間」「サンリブくりえいと宗像」といった大型商業施設が展開されていることで、人の流れが安定しており、今後もこのエリアへの投資意欲は続くものと見られます。

宗像市の注目エリア|生活環境と教育施設、宗像大社もポイントに

宗像大社周辺の景観価値と住宅地としての注目

宗像大社は世界文化遺産にも登録された、宗像市を代表する歴史的施設です。

観光スポットとしての集客力に加え、神域としての落ち着いた環境が周辺の居住地に一定の静けさとブランド感を与えています。

観光地としての利点を生かしたカフェ・雑貨店の展開など、小規模ながらも商業地としての潜在的な魅力を秘めたエリアとも言えるでしょう。

教育環境の整備でファミリー層からの人気も上昇

宗像市は福岡教育大学の所在自治体であることもあり、教育に対する住民の関心が高く、保育園から高等学校まで教育施設が充実しています。

このような背景もあり、赤間・東郷・自由ヶ丘などではファミリー層からの支持が厚く、住宅地のニーズを支えています。

将来的には大学キャンパスとの連携による街づくりが進む可能性もあり、長期的な視点での開発に期待が持てます。

今後の地価見通し|駅周辺・国道沿いが堅調、郊外は個別性重視

宗像市の地価動向を長期的に見ていく上で、以下のような傾向が想定されます。

  1. 駅周辺部(赤間・東郷)は今後も堅調な地価を維持
    • 交通の要所であり、生活利便性・教育環境も良好。
    • 赤間駅再開発事業の進捗によって、さらなる発展が期待される。
  2. 国道3号線沿いは事業用地としての評価が継続
    • ロードサイド店舗需要に支えられ、地価上昇を牽引。
    • 規模の大きな土地利用や複合開発の余地も残されている。
  3. 郊外部では、利便性と環境のバランスが地価を左右
    • 車社会に依存したエリアでは一定の需要があるものの、人口減少や高齢化の影響が顕在化しつつある。
    • 空き地・空き家の活用や再開発が今後の課題となる。
  4. 住宅価格の高止まりと金融環境の変化にも注目
    • マンション・戸建住宅ともに価格が上昇しており、住宅ローンの金利動向によっては需要に影響が出る可能性もある。

まとめ

宗像市は、福岡県内でも地理的な立地条件に恵まれた自治体であり、交通利便性・教育環境・自然環境など、住みやすさに関わる要素をバランス良く持ち合わせています。

住宅地においては、駅周辺部と郊外部で地価の二極化が進みつつあるものの、利便性の高いエリアでは需要が堅調に推移しています。

商業地についても、駅前よりも国道沿いの事業用地に対する評価が高く、今後も需要は維持されると見られます。

地価上昇が続く中で、今後は「価格に見合った価値」がより重視されていくことになりそうです。

購入者・投資家それぞれが、立地の良し悪しだけでなく、地域の将来性やまちづくりの方向性まで視野に入れて判断することが重要になってきています。

宗像市は、そうした意味で多様な可能性を秘めたエリアです。今後の地価動向にも、引き続き注目していきたいと思います。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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