「継続賃料」って何?│新規賃料と違う点を分かりやすく解説

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

はじめに:賃料交渉の現場で欠かせない「継続賃料」の考え方

皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の上銘です。

家賃の適正水準を考える際、「積算法」や「賃貸事例比較法」といった手法があることをこれまでの記事でお話ししました。

これらの手法は、基本的に新たに物件を借りる際に設定される家賃、つまり「新規賃料」を求める際に有用な手法です。

しかし、賃貸借契約を結んだ後、家賃を増減額する交渉の場では、単に市場の相場だけを見ていては不十分なケースが多々あります。

なぜなら、そこには「現行賃料」という既に支払われている家賃があり、オーナーとテナントの間に築かれた継続的な関係があるからです。

そこで重要になるのが、「継続賃料」という考え方です。

今回は、この継続賃料が新規賃料とどう違うのか、そして賃料改定の際に用いられる有用な手法にはどのようなものがあるのかを、分かりやすいく解説していきたいと思います。

新規賃料と継続賃料、そして現行賃料の違いを明確にする

まずは、家賃に関する3つの言葉を整理します。

新規賃料(しんき ちんりょう)

新規賃料とは、まだ契約を結んでいない物件について、新たに賃貸借契約を締結する際に設定される家賃です。

賃貸事例比較法や積算法、収益分析法などを活用して、純粋な市場価値を基に導き出されます。これは、特定の当事者間の事情を考慮しない、客観的な市場賃料と言えます。

現行賃料(げんこう ちんりょう)

現行賃料とは、現在オーナーに支払われている家賃のことです。

賃貸借契約が長期間にわたると、経済状況の変化や地価の変動などによって、現行賃料が市場の相場からずれる乖離が生じる)ことがよくあります。

継続賃料(けいぞく ちんりょう)

継続賃料とは、オーナーとテナントの間の賃貸借関係が継続していることを前提に、現行賃料を改定する際に設定される家賃です。

新規賃料を算定する時とは異なり、単に市場の相場だけを見るのではなく、これまでの賃貸借関係や契約時の経緯、そして経済変動といった「諸般の事情」を考慮して判断されます。

つまり、新規賃料が「ゼロから家賃を求める」のに対し、継続賃料は「現行賃料を起点として、どれくらい調整すべきか」を考える手法です。

賃料改定の鍵を握る「賃料差額」という考え方

継続賃料を算定する上で最も重要な考え方の一つが、「賃料差額」です。

長年の賃貸借契約が続いている場合、現行賃料は、市場の相場である新規賃料よりも低くなっていることがよくあります。

この「新規賃料」と「現行賃料」の間に生じる差額こそが、賃料交渉の大きな論点となります。

この賃料差額は、単なる金額の差ではなく、長年にわたる賃貸借関係の中で積み重ねられてきた、オーナーとテナント双方のメリットや貢献度を象徴するものです。

オーナーにとっては「値上げの根拠」であり、テナントにとっては「長年借りてきたことによるメリット」と言い換えることができます。

継続賃料の鑑定評価では、この賃料差額が大事な要素となり、これをどのようにオーナーとテナントに配分するかが、公正な賃料を導き出す上での鍵となります。

継続賃料を求める3つの主要な手法

不動産鑑定評価基準では、継続賃料を求めるために、主に以下の3つの手法が用いられます。

1. 差額配分法(さがく はいぶんほう)

差額配分法は、賃料改定において最も重視される手法の一つです。

この手法では、まず現行賃料新規賃料賃料差額を求め、その差額をオーナーとテナントの貢献度に応じて配分し、現行賃料に加算(または減算)して継続賃料を導き出します。

この手法は、賃貸借の経緯や借地借家法の趣旨(借主保護)を考慮できるため、裁判や調停の場で特に重視される傾向があります。

2. スライド法(すらいどほう)

スライド法も、継続賃料の算定で重視される手法です。

この手法は、現行賃料に、契約締結時からの物価変動率、公租公課の変動率、経済情勢の変化などを加味して賃料を調整するものです。

賃料を構成する様々な要素がどのように変動したかを客観的に示すため、固定資産税の上昇を根拠とした賃料増額交渉などに有用な手法となります。

スライド法による賃料 = 現行賃料×(1+変動率※)
※変動率はマクロ経済指標や地価動向、テナントの売上などを勘案して決定します。

3. 利回り法(りまわりほう)

利回り法は、積算法の考え方を継続賃料に応用した手法です。

一言で言えば、「昔、合意した利回りを今の不動産価格に当てはめるとどのくらいの賃料か」というイメージです。

物件の基礎価格に、継続賃料を求めるための特別な「継続賃料利回り」を乗じ、これに必要諸経費等を加算して賃料を算出します。

この手法は、物件の収益性や費用性を基に賃料を考えるため、他の手法を補完する形で用いられることが多いです。

まとめ:賃料交渉の第一歩

継続賃料は、新規賃料とは異なり、長年の賃貸借関係と、現行賃料からの変動を考慮して算定される賃料です。

その計算においては、賃料差額が大事な要素となり、差額配分法スライド法といった、独特な手法が用いられます。

特に、重視される傾向にあるのは「差額配分法」と「スライド法」であり、これらの手法の考え方を理解することは、賃料交渉の場でオーナーとテナントの双方が納得できる着地点を見つけるために有用となるはずです。

こちらの記事が、家賃の交渉などのお役に立てば嬉しく思います。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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