FPG社だけじゃない!任意組合型「不動産小口化」商品を不動産鑑定士が調べました。

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

はじめに:相続・事業承継に欠かせない「任意組合型」

こんにちは、不動産鑑定士の上銘です。

不動産の小口化商品が「節税」と「家賃収入」という二つのメリットに注目が集まっています。

これらの商品は、特に資産の相続税対策事業承継を考える高額所得者にとって、重要な選択肢となっています。

この市場の主要プレイヤーであるFPG社、クリアル株式会社、そして東急リバブル社は、それぞれ独自の戦略を展開していますが、特に富裕層向けの相続税対策という点で、任意組合型のスキームに強みを持っているという共通点があります。

今回は、この任意組合型に焦点を当て、主要プレイヤーの戦略を比較しながら、その効果、特に時価と乖離した評価が可能となる仕組みについて、分かりやすいく解説していきます。

1. 不動産小口化の主軸スキーム:「任意組合型」の優位性

不動産の小口化商品が採用するスキームの中で、相続税対策において最も優位性を持つのが「任意組合型」です。

これは、投資家が出資割合に応じて不動産の共有持分を持つ、つまり物件を共同所有する形を取るためです。

スキーム法的根拠投資家(出資者)の地位主なメリット
任意組合型主に民法不動産の共有持分を持つ共同事業者不動産を所有するため、相続税対策に特に有効。時価と乖離する傾向。
匿名組合型主に商法事業者への出資者(利益配分を受ける権利)契約が比較的シンプルで、少額・短期での運用が多い。

任意組合型:相続税評価額の圧縮メカニズム

任意組合型の最大の特徴は、以下のメカニズムにより、効果的な相続税対策として機能する点です。

  1. 相続税評価額の圧縮: 投資対象となる不動産の評価は、現金や有価証券とは異なり、「相続税路線価」をベースに算定されます。この相続税路線価は、一般的に市場の時価と乖離しており、時価よりも低く評価される傾向にあります。これにより、相続税の対象となる財産の評価額が圧縮され、相続税負担を軽減できます。
  2. 登記簿に名義が載る長期運用を通じて資産として保有し続けることができ、任意組合型では出資者全員の氏名が登記簿に記録されます。この所有権が、上記評価圧縮の根拠となります。

このスキームは、不動産特定共同事業法に基づいて組成されることが一般的であり、長期運用を前提とした相続税対策に多く活用されています。

2. 主要プレイヤーの戦略比較(任意組合型に特化)

市場を牽引するFPG社、クリアル株式会社東急リバブル社は、いずれもこの任意組合型スキームを駆使し、それぞれの顧客層に合わせた戦略を展開しています。

FPG社:高額所得者向け長期資産承継

FPG社は、高額所得者向けに、任意組合型による長期運用相続税対策の最適化に強みを持っています。

  • 特徴:物件の選定から出口戦略までを緻密に設計し、相続税路線価に基づく評価減効果と、安定した家賃収入を両立させます。
  • 戦略:高額な現預金を持つ顧客に対し、時価と乖離する不動産評価を活用した節税効果を訴求。長期的な資産承継プランの一環として組み込まれます。

クリアル社:テクノロジーを活用した任意組合型への参入

クリアル株式会社は、IT技術とクラウドファンディングで培ったノウハウを、任意組合型の商品にも応用しています。

  • 特徴任意組合型のメリット(相続税対策)を保ちつつ、オンラインでの情報提供や分かりやすい契約プロセスを通じて、富裕層以外の顧客層にもこのスキームを提供しようとしています。
  • 戦略不動産特定共同事業法に基づき、従来の複雑な任意組合型のハードルを下げることで、市場拡大を目指しています。

東急リバブル社:都心優良物件による確実な相続税対策

東急リバブル社は、大手不動産仲介会社としての優位性を活かし、都心の一等地などの優良物件を任意組合型で提供しています。

  • 特徴:物件の信頼性や立地条件の良さが強みであり、長期運用による安定的な家賃収入と、相続税対策の確実性を重視する顧客に支持されています。
  • 戦略:税理士や弁護士と連携し、顧客の資産背景全体を踏まえた上での、安全性の高い任意組合型スキームを提供しています。

3. 相続税対策における任意組合型の優位性

任意組合型がこれら主要プレイヤーから重視される最大の理由は、他の金融商品では得られない相続税評価額の圧縮効果があるからです。

現預金であればそのまま時価(額面)が課税対象となりますが、不動産を小口化商品として組み込むことで、相続税路線価という独自の評価基準を適用できるため、時価と乖離が発生します。

例えば、時価1億円の現金をそのまま保有する場合と、任意組合型1億円物件保有した場合では、立地にも左右されますが、任意組合型の方が相続税評価額が20%〜30%程度低くなるケースも珍しくありません。

この分かりやすいメリットが、資産家にとって重要な動機となっています。

まとめ:不動産としての価値にも注目

不動産の小口化商品は、その主軸である任意組合型スキームにより、単なる家賃収入だけでなく、相続税対策も可能となります。

注意が必要なのは、法規制の変更に左右される商品という点です。
不動産として本当に価値があるか、価値を維持できるのか」という視点も必要だと考えています。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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