
不動産投資の中でも、ここ数年、底地(借地権付き土地)に注目が集まっています。特に私募リートや機関投資家の中では、「不動産のオフバランス」や「減価償却後利回りの確保しやすさ」といった観点から、底地がポートフォリオに組み込まれるケースが増えてきています。
今回は、地主株式会社の取り組みを参考にしながら、底地投資の魅力と、オフバランスにおける特徴を不動産鑑定士の視点で簡単にご紹介します。
そもそも「底地」ってどういうもの?
簡単に言うと、他人(借地人)に土地を貸して地代収入を得ている土地のことです。地主は土地の所有者ですが、借地人が建物を所有して利用しています。
そのため、土地は保有しているけれど自分では使っていない、建物も持っていないというのが底地の特徴です。
鑑定評価の観点から言うと、借地借家法に定められている「事業用定期借地権」が設定された土地となります。
なぜ「オフバランス」投資になるのか?
企業が保有する自社物件を売却して賃借に切り替える、いわゆるセール・アンド・リースバックのような取引は、貸借対照表から不動産(固定資産)を外す=オフバランス化するために行われます。
一方、底地のように「土地だけを持っていて建物を所有していない不動産」は、投資家が取得しても建物の減価償却が発生しないため、簿価が減らないというメリットがあります。
特に私募リートのように簿価と時価の乖離を意識しながら安定収益を狙う投資スキームにとっては、底地は非常に管理しやすい投資対象になり得るわけです。
建物の減価償却が不要=償却後利回りの安定
建物を保有していると、建物の減価償却によって帳簿価額が年々下がっていきます。これは会計上の費用となるため、投資家への分配金が減ってしまいます。なので、投資家は減価償却後利回りを気にしています。
その点、底地には建物がありません。そのため、簿価の変動がなく、償却後利回りが見通しやすいという利点があります。
私募リート投資家にとっては、安定したキャッシュフローを見込める点、そしてリスク管理の面からも評価が高いわけですね。
地主株式会社の底地ビジネスに学ぶ
底地に特化したビジネスモデルを展開しているのが地主株式会社(旧日本商業開発)です。JINUSHIビジネスとして知られるこのモデルは、建物ではなく「土地(底地)を投資対象とする」ことを徹底しています。
・大手企業との長期借地権契約によって、安定した地代収入を確保。
・建物を持たないことで、固定資産税や維持管理コスト、空室リスクが発生しない。
・投資先としての安定した利回りが魅力。
まさに、「減価償却がない」「オフバランス化」「キャッシュフローが読みやすい」といった、投資家にとって好条件がそろっているわけです。
鑑定評価における注意点と魅力
不動産鑑定士の立場から見ると、底地の評価に大事な点を挙げると、
・地代の水準が相場並みかどうか(高額過ぎる地代は支払いの継続性がない)
・借地契約の内容(期間、更新条件、建替え承諾料など)が価値を大きく左右する
・地価上昇があっても、賃料改定の難しさで評価が伸びづらいこともある(=テナントの収益性が大事)
実務上は、借地借家法上の扱いに留意しつつ、底地の収益性を評価します。
地代水準については、把握が難しいので、日頃から地代の事例収集を行っておく必要があります(私はJリートの底地事例をストックしています)。
まとめ:減価償却がない「底地」は、安定志向の投資家にとって魅力的
底地投資は、安定した収益を長く確保したい人に向いている投資手法です。
特に、オフバランス化を図りたい企業や、私募リートなど償却後利回りを重視するプレーヤーにとっては、底地は非常に有用な不動産と言えます。
不動産鑑定士としても、こうした底地物件の評価には今後ますます専門性が求められる場面が増えると思います。
底地は取引実数がまだまだ少なく、鑑定士の知識量によって評価額に差が出やすいアセットです。当事務所でも継続して底地・借地権の情報を収集していきます。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑
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