
はじめに
福岡県の北部に位置する豊前市は、豊かな自然環境と、日豊本線沿いに点在する交通の要所として発展してきました。
近年、都市圏へのアクセスの良さが注目される一方で、少子高齢化や人口減少が進む中で、地価の動向にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
令和7年(2025年)の地価公示結果を元に、豊前市の住宅地・商業地について、現状を踏まえて解説していきます。
豊前市の住宅地地価動向|人口減少と需要不足で苦戦
住宅地の平均変動率
豊前市の住宅地における令和7年の平均変動率は、▲1.1%となりました。
前年の令和6年(▲1.2%)からわずかに改善したものの、依然として下落基調にあります。
この背景には、人口減少や少子高齢化、そしてその影響を受けた住宅需要の減少があります。
住宅地市場の現状
豊前市内の住宅地に関しては、土地の取引価格が全体的に低迷しています。
住宅地の取引価格帯は、敷地規模にかかわらずおおむね500万円から600万円が中心となっており、非常に手頃な価格帯で取引されていることが分かります。
こうした低価格帯での取引が続いていることは、人口減少により需給バランスが悪化し、土地の価値が下がっていることを示しています。
特に、今後のライフスタイルの変化を見越して、現金で資産を保有したいという理由から、土地を売却する動きが増えているのも現状です。
需要不足の影響
豊前市の住宅地は、主に地元住民や一部の移住者を対象とした市場となっており、その需要は相対的に低く、供給過剰感も見受けられます。
市内での宅地需要は、特に郊外エリアにおいて縮小傾向にあり、価格が下がる一因となっています。
また、住宅ローン金利の上昇や建築費の高騰が、新築住宅の販売に影響を与え、購入者が慎重になる傾向が強まりました。
これらが重なり、地価はさらに圧迫されています。
豊前市の商業地地価動向|需要低迷、地域密着型の出店が目立つ
商業地の平均変動率
商業地については、令和7年の平均変動率が▲2.4%となり、前年の▲2.5%から若干の改善は見られるものの、依然として下落が続いています。
商業地の下落の主な要因は、郊外型の大型店舗への顧客流出と、地域経済の縮小です。
郊外型大型店舗への顧客流出
豊前市の商業地は、中心市街地を除くと、主に個人経営の小規模店舗が多いエリアが多くを占めています。
これらの店舗は、近隣の郊外型大型小売店(スーパーセンターやショッピングモールなど)に顧客を取られ、集客力が低下しています。
特に、豊前市内のスーパーや大型商業施設の数は限られており、消費者が都市圏へ流出しているため、市内の商業地における取引は活況を呈していません。
郊外型の店舗の出店動向
一方で、郊外の幹線道路沿いには、いくつかの郊外型店舗が開店しています。
例えば、国道10号線沿いには、「セブンイレブン豊前警察署前店(大字荒堀)」が令和4年に開店し、「ドラッグコスモス千束店(大字搭田)」も同年に開店しました。
また、県道犀川豊前線沿い(八屋中学校前)には、「鷹勝バーガー&Café(大字赤熊)」が令和4年に開店しています。
これらの新規店舗は、地域住民のニーズをターゲットにした地域密着型の店舗となっており、周辺住民を中心に利用が進んでいるものの、規模としては限られており、全体的な商業地の回復には時間がかかる状況です。
地域密着型の店舗需要
豊前市の商業地では、規模が大きな店舗よりも、地域密着型の店舗が求められている傾向が強まっています。
例えば、地域の生活圏を意識した飲食店や小売店の需要が高まっており、これに対応した新規開店が目立ちます。
これらの店舗は、全国チェーン店が強い都市部に比べ、地元の特色を活かした商品やサービスを提供し、住民との結びつきを強化する方向で経営されています。
そのため、路面店の出店は、規模は小さいものの着実に存在感を示しています。
豊前市の主要スポットとエリア別動向
豊前松江駅周辺|交通の便は良いが、人口減少が影響
豊前松江駅周辺は、JR日豊本線に位置しており、交通アクセスは良好です。
そのため、住民の移動や物流においては非常に便利な立地となっていますが、駅周辺の地価は近年下落傾向にあります。
人口減少と住宅需要の低迷が影響しており、駅周辺でも新しい商業施設や住宅地の開発が進むことなく、既存の施設が少しずつ空き店舗を抱えるようになっています。
今後、地域活性化策が求められるエリアです。
三毛門駅周辺|比較的静かなエリア
三毛門駅周辺は、豊前市内でも比較的静かなエリアです。
この地域では、住宅地の供給が少なく、住宅需要も低迷しているため、地価の下落が続いています。
また、商業施設が少ないため、住民は車で移動して近隣の商業施設にアクセスすることが多く、地域密着型のビジネスが主流です。
宇島駅周辺|郊外型開発が進行中
宇島駅周辺では、郊外型の開発が進んでおり、住宅地や商業施設の供給が増えています。
しかし、人口減少の影響で需要の伸びが鈍く、土地の取引価格が上昇することはなく、安定的に下落傾向が続いています。
新たな開発計画が出てきても、その規模が限られているため、商業地の活況回復には長期的な取り組みが必要となります。
明神町緑地公園周辺|自然環境と住宅地のバランス
豊前市内でも明神町緑地公園周辺は、自然豊かなエリアとして住みやすい地域ですが、周辺の商業地や住宅地は人口減少により地価が下がっています。
公園周辺での新たな開発動向は見受けられませんが、今後も住宅ニーズは一定程度あり、地域密着型の事業展開が求められる場所です。
豊前市の住宅地・商業地を見極めるポイント
豊前市の地価動向を見極めるためには、以下のポイントが重要です。
- 人口減少や少子高齢化の影響
- 郊外型の商業施設との競争状況
- 地域密着型の商業活動の活発化
- 交通アクセスの利便性
- 周辺の開発計画とその影響
これらの要素をしっかりと捉えることで、今後の豊前市の地価動向を予測し、投資や不動産購入に対する判断材料を得ることができるでしょう。
まとめ|地価の下落が続く豊前市、地域密着型の商業活動に注目
令和7年地価公示では、豊前市の住宅地・商業地ともに下落傾向が続いています。
特に住宅地は人口減少や需要不足が大きな影響を与え、商業地においても郊外型の小売店舗の開店が目立ちます。
今後の豊前市では、地域密着型の商業活動が主流となり、人口減少を逆手に取るような地域活性化の取り組みが求められまsす。
地価が下落している中でも、注目すべきエリアは地域密着型の事業や新たな開発計画が進行する場所と考えています。
豊前市にとって明るいニュースが求められますね!
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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