【解説】地価で見る築上町│令和7年は住宅地・商業地ともに下落。東九州自動車道の全線開通は好影響だが、依然として需要は弱含み(R7地価公示)

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

はじめに

福岡県築上郡築上町は、豊かな自然と歴史を感じられるエリアです。

旧藏内邸」や「船迫窯跡公園」など、地域の魅力は多いものの、近年は人口減少と高齢化が進み、町全体としてはやや元気を失っている印象も否めません。

そんな築上町について、令和7年地価公示(R7地価公示)をもとに、不動産鑑定士の視点から住宅地と商業地それぞれの地価動向をわかりやすく解説していきます。

また、東九州自動車道の全線開通という変化もあったなかで、地価にどう影響しているのかについても触れていきたいと思います。

築上町の住宅地地価動向|下落傾向が続く中で厳しい状況

住宅地の平均変動率

令和7年の住宅地平均変動率は▲1.6%となり、前年(▲1.6%)と変わらずでした。

数値だけを見ると安定しているようにも見えますが、実態としては「下落が続いている」ということになります。

特に、築上町においては住宅地の取引件数自体が非常に少なく、動きの鈍い市場となっています。

取引が少ないということは、需要が弱いことを意味しており、地価を押し上げる力も不足している状況です。

継続的な人口減少、高齢化率の高さが背景にあり、住宅地市場の基盤が弱体化している印象を受けます。

住宅地市場の現状と特徴

築上町では、住宅地といっても活発な開発が進んでいるわけではありません。

むしろ、既存の住宅地において空き家が増加している状況です。

町内にはJR日豊本線の築城駅や椎田駅がありますが、駅周辺でも大きな宅地開発や再開発の動きは限定的です。

築城I.C.や椎田I.C.、椎田南I.C.といった東九州自動車道のインターチェンジにもアクセスできる立地ではありますが、やはり通過交通がメインであり、定住者増加には直結していないのが実情です。

こうした事情から、今後しばらくの間は住宅地価格も弱含みで推移すると考えられます。

築上町の商業地地価動向|厳しい商況と下落傾向

商業地の状況

築上町の商業地域は、主にJR椎田駅周辺に整備されています。

しかし、郊外型の大型商業施設への顧客流出や、町全体の人口減少などの影響で、商業地としての繁華性はかなり弱い状況です。

町内にも「ドラッグストアコスモス 椎田店」や「HOTEL AZ 福岡築上店」など、一定の利便施設は存在していますが、大規模な商業エリアと呼べるほどの賑わいはありません。

商業地においても住宅地同様、需要は低調であり、取引件数も少ないのが実態です。

商業地の地価変動

築上町内には商業地の公示地はありませんが、地価調査の結果を見ると次のような傾向が見られます。

  • R4年:▲1.6%
  • R5年:▲1.7%
  • R6年:▲2.1%

直近2年間では下落率が拡大しており、商業地市場も厳しい局面が続いています。


人口減少と地域内需要の縮小が主な要因であり、短期的に大きな改善は見込みづらい状況です。

築上町の交通アクセスと生活環境

東九州自動車道の全線開通効果

2016年には、東九州自動車道の全線開通という大きなインフラ整備がありました。

これにより、築城I.C.や椎田I.C.、椎田南I.C.などから北九州方面・大分方面へのアクセスは向上しています。

ただし、この道路はあくまで「通過型」の性格が強く、残念ながら地元への定住者増加や商業活性化にはまだ大きくつながっていないのが現実です。

道路利便性が向上したこと自体はプラス要素ですが、それを地域内の地価上昇や需要回復に直結させるためには、さらなる工夫が必要だと感じます。

鉄道アクセス

鉄道については、JR日豊本線が町を縦断しており、築城駅と椎田駅が主要な拠点となっています。

ただし、本数は少なく、都市部のような利便性を求めると物足りなさを感じるかもしれません。

また、航空自衛隊 築城基地が立地しているため、基地関係者の出入りは一定数あるものの、それが地価動向に大きなプラス効果を与えているわけではない印象です。

生活インフラについても、必要最低限は揃っていますが、町内完結型の利便性は高いとは言えず、広域圏との連携が不可欠な地域構造になっています。

地域の課題と展望

人口減少と高齢化への対応

築上町においては、人口減少と高齢化が進行しており、住宅地・商業地ともに需要基盤が脆弱化しています。
このため、地価も弱含みで推移せざるを得ない状況です。

町としては、若年層の定住促進や移住促進策を強化することが喫緊の課題だと言えます。

また、リモートワーク対応の住宅整備や、子育て支援策の充実なども重要になってくるでしょう。

さらには、町の魅力である「旧藏内邸」など歴史資源を活かした観光振興にも力を入れることで、地域外からの交流人口を増やす取り組みも有効です。

住宅地・商業地の未来予測

短期的には、住宅地・商業地ともに地価下落傾向が続く見通しです。

ただ、東九州自動車道の整備による交通利便性が再評価されれば、将来的には一定の底打ちも期待できるかもしれません。

特に、北九州市や大分市といった広域都市圏へのアクセスの良さをアピールできれば、通勤圏としての価値を見出す動きが出てくる可能性もあります。

しかしながら、それには町全体としての積極的なプロモーションと、受け皿となる住宅供給体制の整備が不可欠です。

まとめ|築上町の地価は厳しいながらも歴史的建造物などの可能性を秘めている

令和7年の地価公示では、築上町の住宅地・商業地いずれも下落傾向が続きました。

住宅地は▲1.6%の下落、商業地も地価調査結果から見ると下落率拡大という厳しい状況です。

一方で、東九州自動車道の全線開通による交通利便性の向上というプラス材料もあり、これをどう地域活性化につなげていくかが今後のカギになりそうです。

静かな環境で暮らしたい人や、広々とした住まいを希望する人には築上町は非常に魅力的な選択肢にもなり得ます。

こうした潜在的なニーズをどう引き出していくか、地域全体の取り組みが期待されます。

これからも、地価動向とあわせて、築上町の未来を前向きに見守っていきたいですね。

個人的には、歴史的建造物は集客力がありますし、他に動かせないので、築上町の大きな強みになると考えています!コロナ以降、体験型施設への需要が高まっているので、認知と集客次第では地価に追い風となりそうです。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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