【解説】地価で見る小倉南区│令和7年は住宅地・商業地ともに上昇。守恒を筆頭に住宅地は好調だが、交通利便性により地価は二極化(R7地価公示)

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

はじめに

北九州市最大の面積を持つ小倉南区。


自然豊かな住宅地が広がる一方で、JR日豊本線や北九州モノレール沿線を中心に都市機能も発展してきたエリアです。

令和7年(2025年)公示地価では、住宅地・商業地ともに上昇基調が確認されましたが、その内実をよく見ると、地価の動きには明確な「二極化」が進んでいる様子がうかがえます。

今回は、不動産鑑定士の視点から、小倉南区の地価動向を丁寧に解説していきます。

小倉南区の住宅地地価動向|上昇はしているが二極化が鮮明に

住宅地の平均変動率

小倉南区の住宅地における平均変動率は、令和7年は+0.8%となりました。

前年の令和6年(+0.7%)からさらにわずかに上昇しており、全体としては緩やかな上昇基調が続いています。

ただ、地価の上昇・下落の傾向をエリアごとに細かく見ていくと、はっきりとした二極化の傾向が浮かび上がります。

モノレール沿線・JR駅周辺は安定的に上昇

まず、モノレール守恒駅や徳力公団前駅周辺、JR日豊本線の城野駅・下曽根駅・朽網駅周辺といった「交通利便性の高い地域」では、安定した住宅需要が認められ、地価は着実に上昇しています。

特に守恒エリアでは、「サンリブもりつね」など生活利便施設も充実しており、ファミリー層を中心に根強い人気を集めています。


モノレールを使えば、小倉中心部へもすぐアクセスできるため、「車が無くても暮らしやすい街」として利便性が再評価されている側面もあります。

新興の住宅団地についても、一定の需要が維持されており、緩やかながら地価の上昇トレンドが続いています。

一方で交通利便性に難がある場合は需要低迷

一方、モノレールやJR駅から遠い郊外部、あるいは街路条件の悪い場所、傾斜地に立地する住宅地では、需要が低迷しており、地価は下落ないし微減傾向となっています。

小倉南区は非常に広いエリアを抱えているため、こうした「アクセス条件での格差」はどうしても避けられない現実があります。


特に若い世代にとっては、駅から遠い・坂が多い立地は敬遠されがちで、買い手がつきにくい状況が続いています。

今後もこの二極化の傾向は、より鮮明になっていく可能性が高いです。

小倉南区の商業地地価動向|大型商業施設周辺がけん引

商業地の平均変動率

商業地における小倉南区の平均変動率は、令和7年は+2.6%でした。

前年の令和6年(+3.5%)と比べると上昇幅は縮小しましたが、それでも着実に上昇基調が続いています。

商業施設の再開発や集客力強化が奏功し、一定の取引活性化が見られました。

守恒・上葛原・下曽根・沼エリアが好調

区内の商業地では、以下のエリアが特に堅調でした。

  • 守恒地区の「サンリブもりつね」周辺
  • 上葛原地区の「サンリブシティ小倉」周辺
  • 下曽根地区の「サニーサイドモール」周辺
  • 沼地区の「ドッとあーるガーデン小倉」周辺

これらの大型複合商業施設周辺や、主要幹線道路沿いでは、引き続き相応の需要が認められ、高値での取引も見られました。

特に、守恒・上葛原エリアは住宅地としても商業地としても人気が高く、生活利便性の高さが評価されています。

なお「ドッとあーるガーデン小倉」には、300円以上の商品を扱う人気店「THREEPPY」が新たに出店する等、沼地区のイメージ向上・エリア価値を押し上げる材料となっています。

一部エリアではピークアウト感も

とはいえ、すべての商業地が好調というわけではありません。


一部のエリアでは、上昇基調に一服感が見られ、今後は賃料水準の維持や店舗誘致に苦戦する可能性も指摘されています。

特に、郊外型のロードサイド店舗は、競合店の出店状況や交通量の変化に大きく影響されやすく、地価もその影響を受けやすい面があります。

小倉南区の主要スポットとエリア別動向

守恒エリア|モノレール駅近の人気住宅地

守恒駅を中心とするこのエリアは、小倉南区でも特に安定した人気を誇っています。


「サンリブもりつね」など大型スーパーをはじめ、医療・教育施設も充実しており、生活インフラが整っています。

駅徒歩圏内のマンション・戸建て用地は需要が高く、地価も底堅い動きを見せています。


新築分譲マンションの価格帯もじわじわと上昇しており、今後も堅調な動きが期待できるエリアです。

上葛原エリア|大型商業施設集積地

「サンリブシティ小倉」を中心に、大型店や飲食店が集まる上葛原エリア。


国道10号線にも近く、車利用の利便性が非常に高いことが強みです。

商業地としての地価上昇が続く一方、周辺住宅地の需要も堅調で、バランスの取れた成長が見られます。


ただし、ロードサイド型開発が中心のため、車社会を前提とした街づくりになっている点には注意が必要です。

下曽根エリア|再開発が進む期待の地域

JR下曽根駅周辺では、再開発が進み、駅近マンションや医療施設などが整備されています。


「サニーサイドモール」も地域の集客拠点として機能しており、今後さらに地価上昇が期待される地域です。

特に、駅徒歩圏内では住宅需要が高まっており、土地の動きも活発化しています。


交通利便性と生活利便性を兼ね備えたエリアとして、注目度は高まる一方です。

沼・朽網エリア|北九州空港への玄関口

沼・朽網エリアは、北九州空港へのアクセスが良好な地域です。

特にJR「朽網」駅は特急が停車するようになり、北九州空港へのアクセス拠点として注目されています!


「ドッとあーるガーデン小倉」など新たな商業施設の登場で、地価の下支え効果が出ています。

ただ、交通利便性が限られるエリアもあるため、地域ごとの評価には注意が必要です。
特に、公共交通へのアクセスが弱いエリアでは、地価が伸び悩むケースもあります。

小倉南区の住宅地・商業地を見極めるポイント

小倉南区の不動産市況を見る上では、以下のような点に注目することが大切です。

  • モノレール・JR駅からの距離
  • 幹線道路沿いの利便性
  • 商業施設へのアクセス
  • 地形(平坦地か、傾斜地か)
  • 周辺環境(教育・医療施設の充実度)

これらの条件を満たす地域では、今後も安定した需要が期待できますが、条件が整っていない地域では、需要低迷や価格下落リスクも意識しておく必要があります。

まとめ|小倉南区は堅実成長も、二極化への注意が必要

令和7年の地価公示では、小倉南区の住宅地・商業地ともに引き続き上昇傾向が見られました。
特に、「守恒」や「上葛原」、「下曽根」といった交通・商業利便性の高いエリアでは、堅調な成長が続いています。

一方で、交通アクセスや街路条件が劣る郊外部では、需要低迷と地価微減の傾向も出てきています。


これから小倉南区で住宅取得や不動産投資を検討する際には、エリアごとの細かな動向をしっかり見極めることがますます重要になってくると考えています。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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