【解説】地価で見る吉富町│令和7年は住宅地・商業地ともに下落。就労環境が弱く、中津への交通アクセスが重要に(R7地価公示)

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

はじめに

福岡県築上郡に位置する吉富町は、人口約6,000人ほどの小さな町です。

町の規模はコンパクトですが、隣接する大分県中津市と密接な関係を持ち、生活圏・経済圏の一体化が進んでいます。

令和7年(2025年)地価公示の結果、吉富町の住宅地・商業地はともに下落傾向が続きました。

特に住宅地については、就労環境の弱さから住宅需要が中津市側に流れている様子がうかがえます。

この記事では、不動産鑑定士の視点から、吉富町の地価動向を丁寧に解説しつつ、今後の可能性についても探っていきます。

吉富町の住宅地地価動向|小幅な下落が継続

住宅地の平均変動率

令和7年の住宅地平均変動率は▲0.9%となり、前年(▲1.3%)より下落幅は若干縮小しました。

ただ、標準地ベースで見ると、引き続き下落傾向が続いています。

吉富町の住宅地市場は、基本的には「小幅な下落基調」で安定しているものの、力強さに欠ける状況が続いているといった印象です。

特に注目すべきなのは、昼夜間人口比率が89.6%と低めであり、町内で働き暮らす人が少ないことです。

つまり、住んではいるけれど、働きに出ていく人が多い町なんですね。

町内には田辺三菱製薬のような大企業が立地しているものの、就労の中心はどうしても中津市になりがちです。

このため、住宅需要が隣接する中津市などに流れやすく、吉富町内での住宅取引は総じて低調になっています。

住宅地市場の現状と特徴

吉富町の住宅地は、JR日豊本線の吉富駅周辺や主要幹線道路沿いを中心に広がっています。


ただし、駅周辺でも目立った開発は見られず、静かな住宅地が広がっているのが現状です。

新築住宅の供給もごく限られており、空き家や古い住宅の流通が中心となっています。

価格帯としても比較的手頃ではありますが、購買層のターゲットが非常に限られているため、なかなか活発な市場形成には至っていない状況です。

中津市に隣接するという地理的メリットはあるものの、町内での就労機会が限られているため、若年層の定住促進は課題となっています。

吉富町の商業地地価動向|小幅な下落基調

商業地の平均変動率

商業地についても、令和7年の平均変動率は▲0.5%と、前年同様の小幅な下落基調が続きました。

急激な下落ではないものの、商業地としての力強さはやや欠ける結果となっています。

町内には中規模スーパーマーケットが3軒存在しており、日常生活にはある程度便利な環境が整っています。

たとえば、「ドラッグストアコスモス 吉富店」や、「HOTEL AZ 福岡吉富店」周辺には一定の商業集積がみられます。

ただ、それでも繁華な商業地と呼べるエリアは形成されていないのが実態です。

商業地市場の現状と特徴

町役場近郊の既成商業地では、近年住宅地への用途転換が進みつつある状況が見られます。


もともと商業地だった場所に戸建住宅が建つケースが増えており、商業集積の縮小が少しずつ進んでいます。

これには、ネットショッピングの普及や大型商業施設への依存度上昇といった社会全体の流れも影響していますが、やはり地元需要の低下が大きな要因です。

吉富町単独での商業地維持は難しく、今後も住宅地化が進む可能性は高いと言えそうです。

交通アクセスと生活環境

中津市との関係と交通事情

吉富町の生活圏は、隣接する中津市と強く結びついています。


町内にはJR日豊本線の吉富駅があり、中津駅までは電車で1駅、わずか数分でアクセス可能です。

このため、買い物や通勤・通学においては中津市を利用する住民が非常に多く、事実上「中津市のベッドタウン」としての性格を持っています。

生活環境の特徴

吉富町内には、天仲寺公園や鈴熊山公園、広津城跡といった地域の歴史や自然を楽しめるスポットも点在しています。

静かで落ち着いた住環境は、大都市の喧騒を避けたい人にとっては大きな魅力です。

また、生活利便施設も最低限は整っており、コンパクトな町ならではの暮らしやすさも感じられます。

とはいえ、若年層を中心に利便性や就労機会を重視する層にとっては、やや物足りなさを感じる面もあり、今後の定住促進には工夫が求められます。

地域の課題と展望

就労機会の確保と定住促進

吉富町の最大の課題は、やはり就労機会の確保です。

町内における事業所数や雇用機会が少ないため、若い世代が働く場を求めて中津市側へ流出する傾向が続いています。

このため、町としては中津市との連携を深めながら、住宅地としての魅力を高める戦略が有効だと思われます。


例えば、リモートワーク環境の整備支援や、子育て支援策の充実など、定住人口を少しでも増やす施策が求められます。

また、地元産業の振興や小規模企業の支援策など、地域内での就労機会を少しでも増やしていく努力も大切です。

地価の今後の動き

地価の動向については、短期的には引き続き小幅な下落が続くと予想されます。


特に、人口減少や高齢化が進むなかで、大きな地価上昇を期待するのは難しい状況です。

しかし、利便性の高さや中津市への近接性という強みをうまく活かせば、一定の底堅さを維持することは可能です。


今後、JR吉富駅周辺の再整備や、生活利便施設の誘致などが進めば、徐々に地価にもポジティブな影響が出てくるかもしれません。

まとめ|吉富町のこれからに期待

令和7年の地価公示によると、吉富町では住宅地・商業地ともに小幅な下落が続きました。

就労環境の弱さや、中津市への依存度の高さが課題ではありますが、逆に言えば中津市へのアクセス性を武器にできる可能性もあります。

自然豊かな住環境と、コンパクトで便利な生活圏をうまく活かして、吉富町ならではの魅力に注目が集まると地価にも好影響です。

今後の交通インフラ整備や定住促進策に注目しつつ、吉富町の可能性を見守っていきたいです!


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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