不動産鑑定の実務に携わり早10年。実務上、気を付けていることを書いていきます。

不動産の役所調査が重要な理由
「不動産鑑定」の大きな流れとしては、依頼のあった不動産について、資料を貰い、現地調査と役所での調査を行い、価格の計算を進めていきます。
ただし、相続や企業買収などで、不動産資料が依頼者の手元にない場合がよくあります。体感、半分ほどは資料開示が十分ではありません。
そのため、現地調査に加えて、役所での用途地域やインフラの調査がとても重要となります(役所調査の結果次第で、評価額が大きく変わります!)。
役所調査の具体例
不動産は都市計画法や建築基準法など、関連法律が多いので、役所での調査が必須です。
主な調査項目は以下の通りです。
用途地域(都市計画法)
用途地域は、主に建物の用途を規制しており、適正な市街化のために重要な規制です。土地価格は用途地域によって価格水準が異なるので、必ず調査する項目になります。

福岡市であれば「福岡市Webまっぷ」で調査可能です。とても便利で私はお気に入り登録しています!
道路について(建築基準法、道路法)
土地は接面する道路の種類や幅によって、その効用が変わります。まず建築基準法上の道路に接面していないと、建物を建てることが出来ません。また、接面していても幅員が狭いと、建物の規模(容積率)に影響してきます。

福岡市の場合は、福岡市役所の路政課(福岡市HP)で道路幅員をコピー出来ます。
また、同じ建物の4階にて、建築基準法上の道路種別を確認できます。
インフラ(上下水道、都市ガス)
住環境として、インフラが重要になります。特に戸建住宅エリアでは、上下水道や都市ガスの有無が価格にも影響を及ぼすので、必ず調べなければならない項目です。
福岡市の場合は、上下水道はネットで可能(福岡市Webまっぷ、下水道台帳の閲覧)。都市ガスは西部ガスにFAX(西部ガス|道路のガス管に関するお問い合わせ)することにより確認が出来ます。

福岡市内の上水道は2025年からネットで調査可能になりました。それまで薬院の上水道管理課まで調査に行っていたので、不動産関係者にとっては朗報です!
調査効率がかなり上がりました。
ハザードマップ(河川洪水想定区域など)
最近、水害などによる被害が増えており、自治体が独自のハザードマップを公開するようになりました。こちらも鑑定評価書への記載が義務付けられているので、不動産鑑定士が役所の公表資料を調査します。

福岡市の場合は「福岡市Webまっぷ」で調査可能です。津波や河川洪水による想定被害区域が公開されています。市内は河川が多く、高級住宅地の大濠地区や草香江地区でも、ハザードマップの色が付いている地域がほとんどです。
実務では「役所調査力」がとにかく大事
役所調査は不動産価格を計算するうえで必須の作業で、実務で大きなウエイトを占めています。
なにより評価書に必ず書かなければいけないため、間違えることができません・・・。
役所での確認に加えて、依頼書との打ち合わせにより、対象不動産の用途地域や道路付け、ハザードマップ上の扱いを何度も確認していきます。
不動産鑑定士としては、自治体により役所調査の方法が異なるため、スムーズに価格計算ができるよう「役所調査力」を磨いておくのが大事です。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑
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