【解説】地価で見る鹿児島県の住宅地│県全体では地価は下落傾向。鹿児島市はセンテラス天文館などの再開発により地価上昇(R7地価公示)

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

鹿児島県全体の住宅地地価は、依然として下落傾向にあります。

前年(令和6年)の平均変動率は▲0.6%でしたが、今年(令和7年)は▲0.5%と、やや下落幅は縮小したものの、全体としては減少傾向が続いています。

もっとも、県内には一部で上昇を示しているエリアもあり、地域間の格差がより明確に浮かび上がっています。

特に鹿児島市、西之表市、奄美市、姶良市などでは地価が上昇傾向に転じており、今後の成長ポテンシャルを示唆する動きも見られます。

一方で、人口減少と高齢化が進行するエリアでは、依然として需要の減少に伴う地価下落が続いている状況です。


目次

鹿児島市:再開発による上昇と局地的な需要の強さ

鹿児島市は政令指定都市ではありませんが、九州南部における中核都市としての存在感は大きく、商業・行政・交通の中心地でもあります。

令和7年地価公示では、上昇地点が46地点、横ばいが16地点、下落が6地点と、全体として地価は上昇傾向にあります。

前年比でも+0.7%から+0.8%と、着実な地価上昇が確認されました。

その背景には、鹿児島中央駅周辺や天文館地区などで進む再開発があります。

特に「センテラス天文館」の開業は、市中心部の再活性化の象徴とも言える事業で、周辺の地価にもポジティブな影響を与えています。

これまで老朽化した商業施設や空洞化が進んでいた天文館エリアが再び注目を集めており、若年層や県外企業の進出にもつながる動きがみられます。

また、鹿児島中央駅に近接する西田地区は、県内最高価格地点としても注目されており、事務所兼住宅や分譲マンション用地への引き合いが強く、引き続き価格上昇が見込まれます。利

便性の高い市電沿線、特に荒田・下荒田地区も平坦地で人気があり、地価は上昇しています。

一方、旧町村部では少子高齢化が顕著で、地価は下落傾向にあります。

郊外部の中でも、吉野・谷山といった土地区画整理が進行しているエリアでは住宅需要が旺盛で、比較的安定した地価推移を見せています。

なお、鹿児島市内の分譲マンション価格は高水準を維持しており、地価への波及効果が大きいことから、今後の価格動向には注視が必要です。


鹿児島市以外の主要都市:回復傾向は見られるが、慎重な見方が必要

鹿児島市以外の主要市である鹿屋市、薩摩川内市、霧島市では、全体的には地価の下落傾向が継続しています。ただし、下落幅は前年よりも縮小しており、底打ちの兆しとも受け取れる状況です。

鹿屋市では、市の中心部でわずかながら地価の上昇が見られました。これは、行政施設や商業施設へのアクセスの良さが評価された結果と考えられます。中心市街地以外の地区では、やはり地価は下落傾向であり、二極化が進んでいます。

霧島市では、交通アクセスが良く、生活利便性が高い国分・隼人地区において住宅需要が堅調に推移しており、地価は上昇に転じています。

温泉地などの観光資源も有していることから、二地域居住や移住希望者の関心も一定数あるとみられます。一方で、市街地から離れた郡部エリアでは人口減少が顕著で、引き続き下落傾向にあります。

薩摩川内市においても同様に、中心部と郊外で明暗が分かれています。

市内のインフラ整備や道路アクセスの改善が今後の地価動向にどう影響を与えるかが注目されます。


特徴的な上昇エリア:西之表市・奄美市・姶良市・龍郷町・瀬戸内町

今回の地価公示において、特に注目されたのは奄美群島や種子島など、離島地域における地価の上昇です。

例えば、奄美大島の龍郷町では前年比+3.1%と、県内でも最も高い上昇率を記録しました。

龍郷町は奄美市名瀬地区のベッドタウン的性格を持ち、比較的安価な地価水準が引き合いの強さにつながっていると考えられます。

同じく奄美大島の瀬戸内町も、前年に続いて地価が上昇しています。自然環境の豊かさや観光需要、定住促進策などが地価を下支えしている要因とみられます。

さらに注目すべきは、西之表市の地価が上昇に転じた点です。

ここには、国が進める馬毛島における関連施設整備が大きく影響しており、地元では関連需要の拡大が期待されています。前年は横ばい(±0%)でしたが、今年は+1.3%の上昇を示しました。

姶良市も地価が上昇傾向にあります。鹿児島市のベッドタウンとして住宅開発が進む中、価格面での優位性が評価され、地価の押し上げにつながっています。


地価が下落し続けているエリア:枕崎市などの小都市

一方で、県内で最も地価の下落率が高かったのは枕崎市でした。

前年と同様に▲3.6%という大幅な下落を記録しています。

観光地としての知名度はあるものの、人口減少と高齢化の進行、周辺地域からの流入が少ないことから、土地需要は極めて限定的で、地価の回復は容易ではありません。

このように、県内では上昇傾向にあるエリアと、下落傾向が続くエリアとの二極化がより鮮明になっており、地域特性を踏まえた慎重な地価分析が求められます。


まとめ:鹿児島県住宅地市場の現状と今後の見通し

鹿児島県における住宅地の地価は、全体としては緩やかな下落傾向にありますが、都市部や再開発が進む地域、そして離島部の一部で明確な上昇が見られるなど、地域によって動きが大きく異なります。

鹿児島市では、センテラス天文館をはじめとする再開発事業が間接的に住宅地需要を下支えしており、今後も分譲マンション価格の動向などと連動して地価が推移していくと考えられます。

一方、郡部や高齢化が進む地域では、今後も地価の下落リスクが残るとみられ、投資や融資の際には地域ごとの需要動向を精緻に分析することが求められます。

今後も鹿児島県における地価の地域差は拡大していく可能性が高く、地域の特徴を踏まえた評価が不動産の適正価格の把握には欠かせないと考えています!


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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