代表不動産鑑定士の活動実績を更新しました >

ディー・ウイングタワーの事例に見るリフォームの効果。家賃が上がり、リフォーム代に対する利回りは14%超に(福岡リート実例)。

不動産鑑定士の写真

【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

こんにちは。福岡で不動産鑑定士をしている、上銘不動産鑑定士事務所の上銘(じょうめい)です。

不動産投資をしているオーナー様や、これから物件を購入しようと考えている方にとって、切実な悩みが尽きません。

本日は「リフォームやリノベーションに、一体いくらまでかけていいのか?」という問題です。

「きれいにすれば入居者は決まるだろうけど、その工事費を回収するのに何十年もかかったら意味がないし……」

「家賃を数千円上げるために、何百万円も投資して損をしないだろうか?」

こうした悩みに対して、非常に「具体的な答え」が、プロであるJ-REITの運用報告の中に隠されていました。

今回は、福岡リート投資法人の最新決算資料(第42期)から、中央区大名にあるレジデンス「ディー・ウイングタワー」の住戸改修の実例をピックアップします。

リフォーム投資に対する利回りが14.5%という驚異的な数字の裏側を、不動産鑑定士の視点でロジカルに、かつ分かりやすく解説していきます。

リフォームの意思決定で迷っている方にとって、一つの指針になるような記事を目指しました。

目次

福岡リートが示した「リフォーム投資利回り14.5%」、強い・・!

まず、今回のソースとなる福岡リートの資料を見てみましょう。
内部成長戦略のページに、ディー・ウイングタワーの住戸改修効果がグラフ付きで紹介されています。

ここで注目すべきは、家賃が何円になったかという実額ではなく(守秘義務等の関係か、実額は公表されていません)、投資に対する「上昇率」と「効率」です。

資料によると、改修を行った住戸の賃料上昇率はおそらく「+20%台」と思われます。もし元の家賃が10万円だとしたら、約12万円まで上がる計算になります。

福岡リートIR

そして、不動産鑑定士として最も注目したのが、次の数字です。

・改修費用に対する投資利回り:14.5%(=回収期間6.8年)

福岡リートIR
福岡リートIR

この14.5%という数字は、リフォームにかかった費用に対して、年間でどれだけ家賃増額できるかという指標です。もちろん、利回りが高いほど良いです!

新規で物件を買おうとすると、今の福岡市内なら表面利回り4〜5%台がザラですよね。
そんな中で、自分ですでに持っている物件の「中身」に投資することで、14.5%という高利回りでお金を回せている。

これこそが、不動産のプロが実践している最も効率の良い投資、内部成長といえます

具体的な「回収期間」を計算してみる

投資の意思決定をする上で、最も重要なのは「何年で元が取れるか(回収期間)」です。
今回の14.5%という投資利回りをベースに、具体的な回収期間を計算してみましょう。

計算式は非常にシンプルです。

・回収期間(年) = 100 ÷ 投資利回り

今回のケースを当てはめると、

・100 ÷ 14.5 = 約6.8年

つまり、約7年でリフォームにかかった追加費用を、増額した家賃分だけで回収できる計算になります。

これを聞いて皆さんはどう感じますか?

「7年もかかるの?」と思うかもしれません。しかし、不動産という長期資産において、7年で投資額を回収し、8年目からは増額分がまるまる純利益として積み上がっていくというモデルは、非常に手堅い投資と言えます。

建物の耐用年数がまだ20年、30年と残っているなら、最初の7年でリフォーム代を回収し、その後の13〜23年間は「リフォームしなかった場合よりも高い収益」を生み出し続けてくれるわけです。

リフォーム投資の意思決定を下すための3つの基準

不動産鑑定士として、オーナー様がリフォームの意思決定をする際に参考にしていただきたい「3つの判断基準」を整理しました。

  1. 投資利回りは10%をラインにする
    1. 今回の福岡リートは14.5%という好成績でしたが、一般のオーナー様であれば、まずは「投資利回り10%(回収期間10年)」を一つのデッドラインにすることをお勧めします。
    2. 例えば、120万円かけてリノベーションするなら、月額家賃が1万円アップするかどうか。1万円×12ヶ月=12万円ですから、これでちょうど利回り10%です。これ以下の利回りになるようであれば、そのリフォームは「過剰投資」か「企画ズレ」の可能性があります。
  2. 「賃料ギャップ」がどれくらいあるか
    1. ディー・ウイングタワーの事例で家賃が上がったのは、元の家賃がマーケット相場に比べて安かった(賃料ギャップがあった)のが一因です。
    2. 今の家賃が、周辺の新築やリノベ物件と比べてどれくらい乖離しているか。そのギャップが大きければ大きいほど、リフォーム投資の利回りは高くなります。
  3. 回収期間と「出口」のタイミングを合わせる
    1. あと5年で売却しようと考えている物件に、回収に10年かかるリフォームをするのは少しリスクがあります。ただし、リフォームによって「売却価格そのものが上がる」のであれば話は別です。

不動産鑑定士の視点:資産価値はどれくらい押し上げられたか?

キャッシュフローの回収期間も大事ですが、不動産鑑定士としては「物件の評価額」がどう変わったかという視点も忘れずに計算します。

家賃が上がるということは、収益還元法(物件が稼ぐ力から価格を逆算する方法)において、物件価格を直接的に押し上げる効果があります。

仮に、今回のリフォームで年間30万円の家賃アップに成功したとしましょう。

そのエリアの還元利回りが5%だとすると、物件の収益価格の増加分は以下のように計算されます。

・30万円 ÷ 0.05(5%) = 600万円

もしリフォームに200万円かけたとしても、物件の評価額が600万円上がったのであれば、その瞬間に400万円の含み益が生まれたことになります。

こう考えると、リフォーム費用を家賃で回収する7年を待たずとも、投資した瞬間に大きな利益を創出できていることが分かります。

これが、プロが積極的にバリューアップ工事を行う最大の理由です。

福岡のポテンシャルを味方につける

今回の資料(Appendix部分)には、福岡市内の状況として「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」による雇用創出や、企業の立地実績が誇らしげに掲載されています。

なぜ福岡リートがこれほど強気な投資ができるのか。

それは、福岡市内のオフィスワーカーが増え続け、それに伴って「質の高い住まい」を求める層が確実に厚くなっているという確信があるからです。

ディー・ウイングタワーがある中央区エリアは、まさにその恩恵をダイレクトに受ける場所です。

相場全体が底上げされている街だからこそ、リフォームで14.5%という高いリターンが現実のものとなります。

リフォームの意思決定に迷ったら、まずは自分の物件があるエリアの「需要」を見てみてください。

福岡のように需要が伸びている街なら、少々思い切った投資をしても、マーケットがそれを正当化してくれるケースが多いのです。

結論:数字で判断すれば、リフォームは利回りの良い事業に

不動産経営において、リフォームは「単なる出費」ではありません。投資的側面が大いにある「確実性の高い投資」です。

福岡リートのディー・ウイングタワーの事例は、リフォーム利回り14.5%、回収期間約7年という優れた事業になるという点で参考になります。

福岡リートの決算資料というプロの回答を参考に、皆さんの物件でもぜひ一度、投資利回りを計算してみてください。

もし計算してみて「回収に15年以上かかるな……」という結果になったら、それは内容を見直すべきサインといえます。

不動産鑑定士として、数字の事例を集めることが仕事だと考えています。今後もこういった実例を集めていきますので、ぜひ定期的にご覧ください!

上銘不動産鑑定士事務所
不動産鑑定士 上銘

あとがき

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

福岡リートの決算資料は、プロのノウハウが詰まった情報の宝庫です。今回はリフォームに焦点を当てましたが、資料には他にもエリア別の稼働率や、今後の地価動向のヒントが散りばめられています。

これからも、不動産鑑定士ならではの等身大の視点で、こうしたプロの戦略を分かりやすく翻訳してお届けしていきます。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。

この記事の執筆者

活動写真

不動産鑑定士 上銘 隆佑
Ryusuke Joumei

上銘不動産鑑定士事務所 代表。
大和不動産鑑定株式会社 東京本社に2014年に入社後、2019年に不動産鑑定士登録(第10401号)。国内系不動産アセットマネジメント会社への出向を経て、大和不動産鑑定株式会社九州支社へ赴任。2024年に同社を退職し、上銘不動産鑑定士事務所を開所。
適正家賃、関係者間売買、証券化対象不動産、銀行の担保不動産、公有地の売買に係る不動産鑑定評価を中心に、不動産鑑定評価に携わる。
不動産鑑定業 福岡県知事 第(1)-347号

info@jkantei-office.com
お問い合わせはこちらから >

コメント

コメントする

目次