
こんにちは。福岡で不動産鑑定士をしている上銘(じょうめい)です。
今回はJ-REIT資料で「ホテル改装」の事例が載っていたので、ご紹介です。事例(コンプス)は不動産業界では非常に重要なので、不動産鑑定士としての矜持のためストックしてます。
不動産オーナーや投資家の皆様にとって、「いくらお金をかけて、どれだけ家賃(売上)が上がるのか」は気になるはずです。
しかし、リフォームや改装の実施金額とその後の実績値がセットで公開されるケースは、実は非常に稀です。
ジャパン・ホテル・リート投資法人(JHR)の最新資料から、ホテル改装の実例をピックアップしました。
注目するのは、「ラ・ジェント・ステイ札幌大通」と「オリエンタルホテル 東京ベイ」の二つです。
改装代「4,500万円」と「13億円超」という、規模の異なる二つの投資が、コロナ前の2019年比でどれくらい単価を上昇させたか。
不動産鑑定士の視点から書いていきます。
1. 【札幌】4,500万円の投資で単価が1.9倍に?(ラ・ジェント・ステイ札幌大通)
まずは、北海道のラ・ジェント・ステイ札幌大通の事例です。
この事例は、投資額を抑えたピンポイントさが特徴です

投資と成果の概要
- 実施金額(総額):4,500万円
- 対象:19室(全219室中)
- 改装後のADR実績(2025年上期):34,890円
- 2019年同期比:+90.5%
ADRの上昇率が凄いです。。
コロナ前の2019年と比較して、客単価が1.9倍(+90.5%)になっています。
ここで不動産鑑定士として注目したいのは、改装の中身です。
実施したのは、39〜49平米という広めのレジデンシャルタイプの客室にベッドを増設し、定員を2〜3名から最大5名に増やしたこと。
これにより、DOR(1室あたりの平均宿泊人数)を底上げしました。
「4,500万円」という、ホテル規模からすれば少額の投資で、19室のポテンシャルを最大限に引き出し、全体のADRを上げていく。
戦略的CAPEX(資本的支出)の良事例です!
2. 【浦安】13億円超の巨額投資。3点ユニットバスからの脱却(オリエンタルホテル 東京ベイ)
次にご紹介するのは、千葉県浦安市にある「オリエンタルホテル 東京ベイ」です。
こちらは先ほどの札幌よりも大型の「13億7,400万円」という投資を行っています。

投資と成果の概要
- 実施金額(客室):1,374百万円(約13.7億円)
- 対象:315室(全511室中)
- 改装後のADR実績(2025年上期):29,570円
- 2019年同期比:+45.1%
13億円かけて、2019年比で約+45%の単価アップ。
これだけ聞くと「札幌の方が効率が良いのでは?」と思うかもしれませんが、不動産鑑定士の視点としては、資産価値を向上させるための意図をご紹介したいと思います。
ポイントは、3点ユニットバスを独立型(バス・トイレ別)に変更したことと考えています!
今の日本の宿泊マーケット、特にファミリー層が中心となる浦安エリアにおいて、宿泊需要はディズニーリゾートなどのレジャーに寄っていて、お風呂とトイレが一緒というのはADRの伸び悩みの大きなマイナス要因になりつつあります。
宿泊料金よりディズニーという経験を大事にしたい!というファミリーが多いはずです。
また、あわせて実施されたレストラン改装(投資額6,300万円)でも客単価が+37.3%上昇しており、物件全体の経済的耐用年数を大幅に延ばし、鑑定評価額の上昇にも寄与していると言えます。
せっかくディズニーリゾートに来たら、ホテル奮発してしまいますよね!
3. 不動産鑑定士が読み解く「2019年比」の重要性
今回のデータが貴重なのは、比較対象が2019年であるという点です。
今、観光地やホテルの単価が上がっているのは、ある意味インフレによる追い風もあります。
しかし、改装したからこそ2019年という好調だった時期を上回る単価が取れているという事実が、この資料から読み取れます。
4. 自身の不動産経営にどう活かすか?
この2つの事例から学べる教訓はシンプルです。
単価を上げるためのボトルネックを見極める
札幌の事例のように、広い部屋ならベッドを増やすだけで単価が跳ね上がる可能性があります。
今は長期滞在型のホテルが人気化しており、最近上場した「霞ヶ関ホテルリート投資法人」は、アパートメントホテルという多人数ホテルを主軸にしています。
逆に浦安ホテルのように水回りの古さがボトルネックなら、そこを直さない限り、いくら集客しても単価は上がりません。
投資額と回収のバランス(投資利回り)を計算する
札幌の事例(4,500万円)と浦安の事例(13.7億円)。
投資規模は違えど、どちらも2019年比で大幅なプラスを叩き出し、家賃としてオーナーに返ってきます。
自分が持っている予算の中で、最も上昇率が見込めるポイントはどこか。例えば不動産鑑定士に相談し、収益還元法で改装後の価値を予測してから投資に踏み切るのが正解です。
結論:「戦略的CAPEX」の価値
今回のジャパン・ホテル・リート投資法人の資料で「お金をかければ、ADRに跳ね返ってくる」という事例を見れました。

特に、リノベーションの意思決定に迷っているオーナー様にとって、具体的かつ成功している実例は、重要な判断材料になるはずです。
不動産は、放っておけば古くなり、価値は下がります(陳腐化)。
しかし、適切なタイミングで、戦略的CAPEXを行うことで、さらに収益を生み出す不動産に変わります。
- 自分の物件なら、どこを直せば一番単価が上がるだろう?
- 今のマーケットで、この改装にこれだけの金額をかける価値はあるか?
そんな悩みがあれば、ぜひ一度、不動産鑑定士にご相談ください!
あとがき
J-REITの事例は、投資金額とその成果が開示されているので、素晴らしい教科書だと思います。
不動産に関わる方は、コンプス(参考事例)が好きな方が多いので、この事例もトピックとして私の周りに話してみます。
以上、お読みいただきありがとうございました。
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上銘不動産鑑定士事務所 – 福岡都市圏、九州各県の評価実績あり。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
この記事の執筆者

不動産鑑定士 上銘 隆佑
Ryusuke Joumei
上銘不動産鑑定士事務所 代表。
大和不動産鑑定株式会社 東京本社に2014年に入社後、2019年に不動産鑑定士登録(第10401号)。国内系不動産アセットマネジメント会社への出向を経て、大和不動産鑑定株式会社九州支社へ赴任。2024年に同社を退職し、上銘不動産鑑定士事務所を開所。
適正家賃、関係者間売買、証券化対象不動産、銀行の担保不動産、公有地の売買に係る不動産鑑定評価を中心に、不動産鑑定評価に携わる。
不動産鑑定業 福岡県知事 第(1)-347号
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