【解説】地価で見る須恵町│令和7年は住宅地は上昇幅が縮小、割安感が薄れたか(R7地価公示)

不動産鑑定士の写真

【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

福岡市の東側、糟屋郡に位置する須恵町。

緑豊かな自然環境と、福岡空港へのアクセスの良さを兼ね備えた町として、近年注目されてきました。


新しい住宅地の開発が進み、子育て世代を中心に人口増加が続いてきた須恵町ですが、令和7年現在、その地価動向には少し変化の兆しが見られるようになっています。

今回は、不動産鑑定士の視点から、須恵町の地価動向や住宅市場の変化、今後の見通しについて、わかりやすく解説していきます。

目次

須恵町の住宅地地価動向

住宅地は引き続き上昇だが、ペースは鈍化

令和7年における須恵町の住宅地平均変動率は4.2%の上昇となりました。
前年の9.1%上昇と比べると、上昇幅が大きく縮小していることがわかります。

町内の標準地2地点ともに引き続き上昇基調ではありますが、ここ数年続いていた急速な地価上昇の勢いには、やや落ち着きが出てきたという印象です。

これは、ここ数年間にわたって続いていた割安感が薄れてきたことが一因と考えられます。

住宅需要自体は依然として底堅いものの、土地価格が上昇した結果、以前ほど「須恵町は安いから買いやすい」というイメージが持たれにくくなってきているわけですね。

割安感が支えた住宅需要

須恵町では、周辺の志免町や粕屋町と比べると、これまで土地価格や建売住宅の価格に割安感が認められていました。


そのため、一次取得者、特に若いファミリー層を中心に、マイホーム取得先として選ばれるケースが非常に多かったのです。

ミニ開発による新しい宅地供給も活発で、「新しい街並みが次々にできる」という点も魅力となり、人口も着実に増加してきました。

こうした動きが、地価上昇を後押ししてきたわけですが、地価の高い上昇が数年続いたことで、最近では割安感がやや薄れ、「他地域とそこまで大きな価格差はない」と感じる声も増えてきました。

このため、ここにきて地価上昇の勢いが少し緩やかになっている、というのが実情です。

開発余地の多さが特徴

須恵町の住宅地市場で特徴的なのは、開発可能な農地や空き地が比較的多く残っていることです。

福岡都市圏では、既に開発余地の少ない地域が多い中、須恵町では今もミニ開発や分譲地造成が盛んに行われており、供給サイドの動きが活発です。

今後も一定の住宅地供給が見込まれるため、需給バランスが極端にひっ迫することは考えにくく、地価についても急騰というよりは、緩やかな動きになる可能性が高いでしょう。

須恵町の商業地・産業地動向

須恵スマートI.C.周辺の利便性向上

須恵町のもう一つの大きなトピックが、「須恵スマートI.C.」の開通です。

これにより、九州自動車道へのアクセスが飛躍的に良くなり、福岡市中心部への通勤・通学だけでなく、九州各地への物流やビジネス展開にも非常に便利な立地となりました。

このインターチェンジ効果は、住宅地だけでなく、商業地や産業地にも広がっています。
特に、幹線道路沿いの土地需要が高まっており、物流施設や事業所の立地が進みつつあります。

工業専用地域の発展と物流施設の進出

須恵町には、工業専用地域が設けられており、ここを中心に物流施設が建ち並んでいます。

具体例を挙げると、「福岡ロジスティクスサービス」や「佐川グローバルロジスティクス」といった大型物流企業が進出し、地域経済の活性化に寄与しています。

福岡空港にも至近距離にあり、なおかつ九州自動車道にも直接アクセスできるという地の利を活かし、今後さらに新たな物流関連施設の誘致が進む可能性があります。

この流れは、須恵町の地価動向にも間違いなく好影響を与えていくと思っています。

須恵町の住環境と交通インフラ

JR香椎線の存在感

須恵町には、JR香椎線の「須恵駅」「須恵中央駅」「新原駅」という3つの駅があり、福岡市方面へのアクセスを支えています。

特に「須恵中央駅」周辺では、新しい住宅開発も進んでおり、駅徒歩圏内でのマイホーム取得を希望する層に人気が高まっています。

香椎線自体は本数が少なめというデメリットもありますが、それでも公共交通機関で移動できる選択肢があるのは、生活の利便性を大きく高めています。

自然豊かな環境と都市近接のバランス

須恵町の大きな魅力の一つが、自然豊かな環境です。

町内には里山や田園風景が広がっており、福岡市内からわずか30分程度の距離でありながら、のびのびとした生活ができる点が、多くの人に支持されています。

一方で、イオンモール福岡などの大型商業施設にも近く、普段の買い物やレジャーにも不自由しないというバランスの良さも光ります。

「緑に囲まれて、なおかつ都市機能にもすぐアクセスできる」というこの嬉しい立地条件が、須恵町の住宅需要を支えているわけですね。

須恵町の今後の展望

地価は緩やかな上昇基調を維持か

現在の地価動向を見ると、須恵町は急激な高騰局面を終え、緩やかな上昇基調に移行しつつあるといえます。

割安感が薄れたとはいえ、福岡市内やその周辺地域と比較すれば、まだまだ手の届きやすい価格帯であることに変わりはありません。
一次取得者層にとっては、引き続き魅力的な選択肢となるでしょう。

また、須恵スマートI.C.や物流施設立地の恩恵を受け、地域全体の活性化が進めば、住宅地・商業地双方に安定した需要が続く可能性が高いです。

工業専用地域の活用がカギ

今後の須恵町の発展において重要となるのが、工業専用地域の活用戦略です。

福岡都市圏では、箱崎エリア・アイランドシティエリア等の工業系用地が非常に限られてきているため、須恵町の持つポテンシャルは大きいといえます。

物流企業だけでなく、製造業やIT系のバックオフィス機能を持つ施設なども誘致できれば、町の産業基盤は一段と厚みを増すでしょう。

結果的に、雇用の場が増え、町の人口も安定的に推移していくことが期待されます。

住宅地供給バランスの調整も必要に

一方で、今後の課題としては、宅地開発の供給バランスに注意が必要です。

開発余地が多いがゆえに、過剰な供給が続くと、需給バランスが崩れて地価が伸び悩むリスクも考えられます。
市場動向を見極めながら、適切なペースで住宅供給をコントロールしていくことが、町としての持続的な成長には不可欠でしょう。

まとめ

須恵町の地価動向を振り返ると、住宅地は依然として上昇基調にあるものの、上昇幅は縮小し、かつての割安感はやや薄れてきたことがわかります。

一方で、福岡都市圏内で自然と都市機能を両立できる町としての魅力は揺らいでおらず、住宅需要も底堅さを保っています。

また、須恵スマートI.C.開通による交通利便性の向上や、工業専用地域を活かした物流施設の進出など、商業地・産業地にも明るい材料が揃っています。

これから須恵町でマイホーム購入や不動産投資を検討する方は、こうした地価の落ち着きと周辺環境の発展性を踏まえつつ、じっくりと物件選びを進めていくことをおすすめします!


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

コメント

コメント一覧 (2件)

【解説】データで見る久山町の地価│令和7年は住宅地、商業地ともに好調、県道35号沿いが強い - 上銘不動産鑑定士事務所│福岡の不動産鑑定 へ返信する コメントをキャンセル

目次