
こんにちは、上銘(じょうめい)不動産鑑定士事務所の代表、不動産鑑定士の上銘です。
おかげさまで当事務所も2024年5月の開業から一年半を過ぎ、日々多くの評価実務に携わらせていただいております。今回は、私が実務を通じて収集した最新データに基づき、「不動産マーケットレポート 福岡市版 2026年春号」をまとめました。
現在の福岡市は、都市再開発プロジェクト「天神ビッグバン」により激動の中にあり、地価上昇率やオフィス・ホテル市場の熱量は東京23区に並ぶ勢いを見せています。
本レポートでは、不動産鑑定士の視点から公示地価、オフィス・ホテル市況、そして加熱する分譲マンション市場について徹底解説します。
1. オフィス市況:天神ビッグバンの進展と需給バランスの現在地
再開発の象徴「ワン・フクオカ・ビルディング」と今後の供給計画
福岡都心部の景観を一変させている「天神ビッグバン」は、いよいよ具体的な成果物として街に現れています。
その象徴が、2025年4月に竣工した「ワン・フクオカ・ビルディング」です。
旧・天神コア跡地に位置し、地下鉄天神駅直結という最高の立地を誇るこのビルは、オフィス・商業・ホテルが融合した“福岡の顔”となっています。
さらに、2025年6月には「天神住友生命 FJ ビジネスセンター」が竣工しました。
今後の供給予定は以下の通りです。
- 2026年: 天神ビジネスセンター2期計画(仮称)
- 2027年5月: イムズ跡地(仮称)
- 2030年度: 福岡パルコ・新天町一体計画(仮称)
なお、三菱地所が手掛ける「イムズ跡地(仮称)」については、既存建物の解体工事が難航している影響で、開業が当初予定より遅れるとの報道も出ており、注視が必要です。
賃料動向と空室率の改善
オフィス賃料は、全国的に見ても力強い上昇を見せています。
2025年12月時点の福岡市の平均賃料は一口当たり12,281円/坪で、前年比+3.5%の上昇を記録しました。
これは大阪(+4.8%)や東京(+4.4%)に次ぐ高い伸び率です。
新築オフィスについては、大量供給により一時期は空室率が48.8%(2025年3月時点)まで上がりましたが、直近の2025年12月時点では27.8%まで改善が進んでいます。
募集賃料は30,000円/坪前後と強気な設定が続いていますが、フリーレント交渉などの柔軟な条件設定により、徐々に床が吸収されている実態がヒアリング調査でも明らかになっています。
2. 土地価格:全国を牽引する福岡市の地価上昇
令和7年地価公示の結果:東京23区を圧倒する上昇率
令和7年の地価公示において、福岡市は住宅地・商業地ともに非常に高い上昇率を記録しました。
- 住宅地: 前年比 +9.0%(東京23区は+3.4%)
- 商業地: 前年比 +11.3%(東京23区は+1.6%)
この背景には、東京や大阪と比較して価格水準がまだ相対的に割安であることや、都市としての成長力への強い期待があります。
不動産鑑定士が注目する4つの地点
レポートでは、特に特徴的な動きを見せた地点をピックアップしています。
- 中央区大濠1丁目(中央-2):+14.9%(1,310,000円/㎡) 大濠公園に隣接する屈指の高級住宅地です。富裕層向けの立地であり、建築費高騰分を販売価格に転嫁できるエリアであるため、高い上昇率が継続しています。
- 中央区天神1丁目(中央 5-9):+2.5%(12,100,000円/㎡) 天神地区の一等地ですが、上昇率はやや縮小しました。オフィス大量供給による先行き不透明感や利回りの下げ止まりが影響していますが、投資意欲自体は依然として旺盛です。
- 東区箱崎6丁目(東-42):+19.3%(365,000円/㎡)
- 東区箱崎3丁目(東 5-1):+21.1%(470,000円/㎡) 現在、最も注目を集めているのが箱崎エリアです。九州大学箱崎キャンパス跡地の再開発において、住友商事を代表とする企業連合による計画が具体化したことで、再開発期待が地価を強力に牽引しています。
3. 不動産の証券化とホテル市場:利回り低下とインバウンドの恩恵
還元利回りの低下とJ-REITの動き
収益物件の評価において重要な還元利回り(キャップレート)は、長期的に低下傾向にあります。
象徴的な取引事例として、「ヒルトン福岡シーホーク」が鑑定評価額717億円、還元利回り4.3%で取得されました。
また、福岡中心部のビジネスホテルである「アパホテル〈博多駅前4丁目〉」は還元利回り3.9%という低い利回りで取引されており、投資家の選好が反映されています。
私募リートの立ち上げ加速
地元大手企業による私募リートの活用も目立っています。
- 運用開始済み: JR九州プライベートリート投資法人、FJプライベートリート投資法人(福岡地所)。
- 準備中: 九電プライベートリート投資法人(2026年2月開始予定)、西日本鉄道の私募リート。 これにより、福岡の優良物件が長期的に地元資本で運用される体制が整いつつあります。
ホテル市場の活況
インバウンド需要の回復により、福岡のホテルは高稼働・高単価となっています。
稼働率(OCC)は90%超を維持しており、宿泊料金(ADR)の値上げも相次いでいます。
- ネストホテル博多駅前: ADR 15,736円(OCC 98%)
- ザ・ワンファイブ福岡天神: ADR 14,571円(OCC 88%)
4. 分譲マンション市場:高騰する価格と供給の抑制
平均価格は「5,500万円」の大台へ
福岡市内の新築分譲マンション平均価格は5,598万円に達し、前年比で+40.1%という驚異的な上昇を記録しました。
土地代と建築費の高騰が要因ですが、購買力は上限付近に達していると思料されます。
現在は、共働き夫婦によるペアローンや既存物件の買い替え、または九州各県の富裕層による取得が市場を支えています。
供給戸数の減少と中古市場の連動
2024年の発売戸数は2,564戸で、前年比▲13.0%の減少となりました。
用地取得競争の激化により開発が思うように進まない傾向にありますが、好立地物件は竣工前に完売する状況が続いています。
中古市場も高騰しており、「ブリリアタワー西新」や「MJR六本松」などのプライム物件は、新築分譲時を大きく上回る価格で取引されています。
5. 不動産鑑定士の役割:地代・家賃の適正化への相談増加
昨今の急激なマーケットの変化に伴い、当事務所では以下のようなご相談が増えています。
- 家賃改定の相談: 固定資産税やコスト増を背景に、賃貸人が適正な賃料への値上げを検討するケースです。鑑定評価により、コスト増を反映した適正な新規家賃を算定いたします。
- 定期借地権の地代設定: 土地活用の際、適正な地代が不明なケースです。当事務所が「明確なベンチマーク」としての地代を算定し、円滑な契約締結を支援しています。
まとめ:福岡不動産マーケットの展望
2026年春の福岡市では「再開発による期待値の顕在化」と「価格の二極化」が同時に起きている局面です。
天神ビッグバンによるオフィス供給は着実に吸収されつつあり、九大跡地再開発を控える箱崎エリアなど、将来性の高いエリアには依然として強い資金が流入しています。
一方で、マンション価格の高騰や利回りの下げ止まりなど、投資判断にはより精密な「目利き」が求められる時代になっています。
不動産鑑定士として、これからも実務に即したリアルな情報をお届けし、皆様の資産形成・運用の一助となれば幸いです。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
この記事の執筆者

不動産鑑定士 上銘 隆佑
Ryusuke Joumei
上銘不動産鑑定士事務所代表。
大和不動産鑑定株式会社東京本社に入社し、2019年に不動産鑑定士登録(第10401号)。国内系不動産アセットマネジメント会社への出向を経て、大和不動産鑑定株式会社九州支社へ赴任。
適正家賃、関係者間売買、証券化対象不動産、銀行の担保不動産、公有地の売買に係る不動産鑑定評価を中心に、不動産鑑定評価に携わる。
不動産鑑定業 福岡県知事 第(1)-347号
info@jkantei-office.com
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