
「なんで不動産鑑定士になろうと思ったの?」とよくご質問を頂きます。
理由はいくつかありますが、私が調べた2013年当時は、まずとても難しい資格で独占業務がある。不動産業界の最高峰の資格なのに、人気があまりなく、受験生もどんどん減っているという状況だったんです(2025年でも同じ状況です)。
逆張りというわけではありませんが、需要はそれほど変わらないはずなのに受験者が減っているのは、大きなチャンスではないかと思いました。
大学は建築学科ということもあり、一級建築士になりたかったのですが、周りの学生もみんな目指していました。だったら、少し変わった仕事を選んだほうが面白いし、自分のキャリアにも個性が出せるのではないかと思ったのも理由の一つです。
そもそも不動産鑑定士って何する仕事?
不動産鑑定士の仕事について簡単に言うと「不動産の時価を計算する仕事」です。不動産にはいろいろな公表価格があり、「一物四価」や「一物五価」と言われることもあります。例えば、固定資産税評価額や国税庁が公表している路線価などですね。こうした価格がある一方で、実際の取引価格は異なることが多く、その「実際の価値」を示す時価を計算するのが、不動産鑑定士の仕事です。
業務自体はシンプルですが、不動産の評価では周辺の取引事例がとても重要になります。「隣の土地はいくらで売れたのか」「この辺の土地が〇〇円だった場合、この土地はいくらになるのか」といったように、比較しながら価格を判断していきます。そのため、正確な情報を集めることが非常に大切な仕事になります。
弁護士や税理士とも関わるけど、どういう関係?
業務上、弁護士や税理士、公認会計士の方と関わることがあります。「どういう関係があるんですか?」と聞かれるのですが、具体的な案件で説明すると、まず弁護士の場合は訴訟関連の業務ですね。よくあるのが財産分与のケースです。
例えば、離婚の際に不動産をどう分けるかという問題があります。不動産は現金のようにそのまま二つに分けることができないので、「この不動産の評価額が2,000万円だったら、不動産を受け取らなかった方には1,000万円を支払う」といった形で分けることになります。こうした場面で、不動産の時価を算定するために依頼をいただくことが多いです。
次に、税理士の場合は、顧問先の社長などが関係するケースですね。たとえば、賃貸アパートや賃貸マンションを複数所有している場合、個人名義のままだと所得税の累進課税により税金が高くなってしまいます。
そこで、「そろそろ法人化して、不動産を法人に移しましょう」となることがあります。このとき、不動産は時価で譲渡することになっているため、「この不動産の時価はいくらなのか?」というご相談を受けることが多いです。
「これだ!」と思ったきっかけと、資格を目指すまで
不動産鑑定士になろうと決めたきっかけは、まずネットで調べたときに「年収が高そうだな」と思ったことでした。確か平均年収が700万〜800万円くらいと書かれていて、「それなら結構いいな」と学生のときに感じたのを覚えています。さらに、受験生が減っているという話もあったので、「もしかしたら、今後もっと平均年収が上がっていくのでは?」と思ったのも理由の一つです。
また、仕事の内容自体も「不動産の価格を求める」という唯一無二の専門職で、とても面白そうだなと思いました。周りに不動産鑑定士がいなかったので具体的なイメージは持てなかったのですが、ちょうど資格を目指そうと考えたタイミングで、近くの鑑定会社がアルバイトを募集していたんです。
そこで「実際にどんな仕事なのか知りたい」と思い、応募して数カ月ほど働かせてもらいました。
アルバイトでは、基礎的な物件調査、いわゆる「役所調査」を経験しました。対象の不動産がどこにあるのか、地番が何番で、隣には何が建っているのか、用途地域は商業地域なのか工業地域なのか、それとも住宅系なのか、といったことを役所やネットで調べる業務です。
実際に働いてみると、自分の中の業務イメージと大きくズレることはなく、細かい作業を積み重ねていく仕事も特に苦にはなりませんでした。むしろ、いい意味でアナログな部分も多く、「鑑定ってこういう感じなんだな」と感動したのを覚えています。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑
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