

上銘不動産鑑定士事務所では、福岡市の不動産市況を東京23区・大阪市・名古屋市(以下「3大都市」)と比べた「不動産マーケットレポート 福岡と3大都市比較版」を作成しました。地価・オフィス・家賃・人口・新築マンション・ホテル・J-REITの取引事例について、公表資料をもとに整理しています(2026年10月時点)。
総括
福岡市は「伸び率」で3大都市を上回る
福岡市の基準地価は2012年を底に14年連続で上昇し、2012年を100とした累積上昇は住宅地188.6、商業地310.9と3大都市を上回ります。人口増加率も3.1%で政令市トップです。家賃はカップル向けで東京23区の約5割の水準にとどまる一方、ファミリー向けは2020年比+56.3%と上昇が目立ちます。
一方、2026年の基準地価は住宅地+5.5%、商業地+8.1%と2年連続で上昇幅が縮小し、東京23区・大阪市を下回りました。建築費の高騰や金利上昇が、上昇のペースを抑え始めています。
| 指標 | 福岡市 | 東京23区 | 大阪市 | 名古屋市 |
|---|---|---|---|---|
| 基準地価 住宅地 変動率(2026年) | +5.5% | +8.7% | +6.7% | +2.7% |
| 基準地価 商業地 変動率(2026年) | +8.1% | +13.3% | +12.3% | +4.0% |
| 住宅地の累積上昇(2012年=100) | 188.6 | 165.0 | 127.3 | 134.6 |
| 商業地の累積上昇(2012年=100) | 310.9 | 214.2 | 239.8 | 178.4 |
| 家賃 カップル向け(2026年9月) | 95,774円 | 185,109円 | 115,934円 | 86,170円 |
| 家賃 ファミリー向け 上昇率(2020→26年) | +56.3% | +37.6% | +41.0% | +21.8% |
| 人口増加率(2020→2025年) | +3.1% | +2.2% | +1.9% | +0.6% |
| 新築マンション坪単価(2025年) | 279.7万円 | 697.2万円 | 383.5万円 | 284.6万円 |
| 客室稼働率(2025年・都府県) | 72.1% | 76.3% | 78.6% | 69.2% |
出典:国土交通省、アットホーム、総務省、不動産経済研究所、観光庁の公表資料より当事務所作成
オフィス市況
平均賃料・空室率 各年12月時点(2026年は9月)


出典:三鬼商事「オフィスマーケット」平均空室率・賃料月次データ(地区名は東京・大阪・名古屋・福岡の各ビジネス地区)
2026年9月の福岡ビジネス地区の平均賃料は12,691円/坪で、2019年12月(10,547円)から約2割上昇しました。名古屋(13,410円)・大阪(13,609円)との差は縮まりつつあり、東京(23,985円)の約5割の水準です。
平均空室率は2019年に2%前後まで低下した後、天神ビッグバンなどによる新築ビルの大量供給で5%台に上昇しました。2026年9月は5.02%ですが、新築ビルの空室消化は進んでおり、賃料の上昇基調は続いています。2026年8月には天神ビジネスセンターⅡが開業し、イムズ跡地の「天神大樹」は2027年5月末の竣工が予定されています。
土地価格
地価の推移 基準地価・7月1日時点


出典:国土交通省「都道府県地価調査」。2006〜2008年は東京都・大阪府・名古屋市・福岡市の地価調査資料
2007年のミニバブル期、福岡市の住宅地は+0.7%と小幅な上昇にとどまり、2009年の下落も▲3.4%と東京23区(▲10.6%)より浅く済みました。2013年以降は上昇が続き、2020〜2021年のコロナ禍でも商業地は+7%台を保ちました。同じ時期に東京23区・大阪市の商業地はマイナスとなっており、福岡市の底堅さが目立ちます。

出典:国土交通省「都道府県地価調査」の平均変動率から算出(地点の入れ替えがあるため、実際の価格水準の比ではありません)
天神・博多の地点別 価格推移 1986〜2026年

出典:国土交通省 地価公示(1月1日時点:天神2丁目・博多駅前3丁目)、福岡県 地価調査(7月1日時点:天神1丁目・天神4丁目)
| 地点 | 調査 | 2026年 | 2000年以降の底値 | 底値からの倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 博多駅前3丁目(博多5-1) | 地価公示 | 818万円/㎡ | 149万円(2005年) | 5.5倍 |
| 天神1丁目(中央5-15) | 地価調査 | 918万円/㎡ | 260万円(2003年) | 3.5倍 |
| 天神2丁目(中央5-1) | 地価公示 | 718万円/㎡ | 247万円(2003年) | 2.9倍 |
| 天神4丁目(中央5-4) | 地価調査 | 671万円/㎡ | 145万円(2005年) | 4.6倍 |
博多駅前3丁目は2005年の149万円から2026年に818万円と約5.5倍になり、2020年に天神2丁目を上回って、市内の最高価格地である天神1丁目に迫っています。天神1・2丁目は2020年以降、年1〜3%程度の小幅な上昇にとどまる一方、天神4丁目は再開発を背景に上昇が続いていますが、バブル期のピーク(1991年1,200万円)の約6割の水準です。
特徴的な地点 令和8年地価調査・価格上位5地点
【住宅地】
| 順位 | 所在 | 価格(円/㎡) | 変動率 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 中央区地行3-29-16 (中央-10) | 715,000 | +10.0% | よかトピア通り沿いの地行・百道浜周辺は、富裕層向け分譲マンションの用地として引き合いが強い。建築費の上昇分を販売価格に乗せやすい立地で、前年並みの高い上昇を保った。 |
| 2 | 中央区梅光園2-5-1 (中央-9) | 637,000 | +10.4% | 大濠公園の西側、七隈線沿線の落ち着いた住宅地。分譲マンション用地の需要が厚く、上昇率でも市内上位に入る。 |
| 3 | 中央区御所ヶ谷2-40 (中央-8) | 625,000 | +4.2% | 平尾・浄水通に近い市内屈指の高級住宅地。価格水準がすでに高く、新築分譲の販売期間も延びていることから、上昇率は4%台に落ち着いた。 |
| 4 | 南区高宮2-10-25 (南-12) | 615,000 | +8.8% | 西鉄高宮駅に近く天神へのアクセスがよい南区の優良住宅地。中央区との価格差を背景に、マンション用地の需要が流入している。 |
| 5 | 城南区鳥飼7-1-10 (城南-13) | 604,000 | +6.9% | 地下鉄空港線の沿線で、西新・大濠方面にも近い利便性の高い住宅地。中央区・早良区の高値を受けて需要が波及し、堅調な上昇が続く。 |
【商業地】
| 順位 | 所在 | 価格(円/㎡) | 変動率 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 中央区天神1-12-3 (中央5-15) | 9,180,000 | +0.3% | 市内の最高価格地。天神ビッグバンによる大量供給で一時はオフィス空室率が上昇したが、消化が進んでいる。価格水準が極めて高いため、上昇は小幅にとどまった。 |
| 2 | 中央区天神2-5-17 (中央5-3) | 7,320,000 | +1.0% | 天神の中心商業地。店舗・オフィスとも需要は底堅いものの、金利上昇で利回りの低下余地が小さく、上昇率は1%程度にとどまる。 |
| 3 | 中央区天神4-3-8外 (中央5-4) | 6,710,000 | +5.8% | 天神北側の再開発が進むエリア。新築ビルの竣工やホテル需要を背景に、上位地点の中では比較的高い上昇を示した。 |
| 4 | 博多区博多駅東1-12-6 (博多5-1) | 5,800,000 | +1.8% | 博多駅筑紫口側のオフィス集積地。新幹線・空港へのアクセスを評価するテナント需要は堅調だが、価格水準の高さから上昇は緩やか。 |
| 5 | 中央区大名2-6-36 (中央5-13) | 4,860,000 | +3.0% | 天神西側の大名エリア。供給の希少性が高く店舗・ホテル需要も強いが、投資利回りの面から上昇幅は前年より縮小した。 |
出典:福岡市「令和8年度地価調査(福岡市分)」価格高順位表。コメントは当事務所の見解
賃貸住宅
家賃の推移 割安感を残したまま上昇


出典:アットホーム「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向」(2020年9月・2026年9月)
2026年9月の福岡市のカップル向け(30〜50㎡)の平均募集家賃は95,774円で、東京23区(185,109円)の約52%、大阪市(115,934円)の約83%の水準です。シングル向けは67,115円で名古屋市(65,084円)を上回りました。2020年9月からの上昇率は、ファミリー向け(50〜70㎡)が+56.3%と3大都市を上回っています。
新規の募集家賃が上がるなかで、既存の賃貸借契約の家賃(継続賃料)をどう見直すかは、貸主・借主の双方にとって重要な論点になっています。
人口・新築マンション

出典:総務省「令和7年国勢調査 人口等基本集計」(確定値)

出典:不動産経済研究所(長谷工総合研究所資料掲載)。坪単価は㎡単価×3.30578で換算
2025年国勢調査(確定値)の福岡市の人口は166万2,793人で、5年間で5万401人(+3.1%)増えました。増加率は政令市で2回連続の1位です。
2025年の新築マンションの坪単価は、福岡市が279.7万円で東京23区(697.2万円)の約4割、大阪市(383.5万円)の約7割にとどまり、名古屋市(284.6万円)とほぼ同じ水準です。平均価格は5,305万円と大阪市・名古屋市を上回りますが、これは平均面積が約63㎡と大きいためです。
ホテル

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値

出典:各投資法人HPより当事務所が暦年で集計(2026年は1〜9月)
| ホテル(投資法人) | ADR | 稼働率 | RevPAR | RevPAR 2019年比 |
|---|---|---|---|---|
| ザ・ワンファイブ福岡天神(いちご) | 13,829円 | 98.3% | 13,592円 | +46.2% |
| スマイルホテル博多駅前(みらい) | 11,890円 | 98.6% | 11,720円 | +51.5% |
| ネストホテル博多駅前(いちご) | 17,121円 | 89.9% | 15,387円 | — |
| ザ・ワンファイブマリン福岡(いちご) | 11,065円 | 99.2% | 10,978円 | — |
出典:いちごホテルリート投資法人「ホテル運営状況のお知らせ」、投資法人みらい「変動賃料ホテル運用状況の推移」(2025年・暦年)
2025年の福岡県の客室稼働率は72.1%で、コロナ前の2019年を上回りました。J-REITが保有する福岡市内のホテルは稼働率がほぼ満室に近く、宿泊単価(ADR)の上昇がRevPAR(販売可能客室1室あたりの客室売上)を押し上げています。
J-REITの取引事例

| 物件名 | 投資法人 | 用途 | 取得日 | 取得価格(億円) | 鑑定評価額(億円) | CR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ロジシティ古賀 | 福岡リート投資法人 | 物流施設 | 2026-12-28(予定) | 47.0 | 53.5 | 4.5% |
| トリアス(匿名組合出資) | 福岡リート投資法人 | 商業施設 | 2026-12-14(予定) | 104.0 | 123.8 | 4.6% |
| キャンパステラス九大学研都市 | 三井不動産アコモデーションファンド投資法人 | 学生向け住宅 | 2026-03(予定) | — | — | 4.0% |
| アパホテル〈博多駅前4丁目〉 | 日本ホテル&レジデンシャル投資法人 | ホテル | 2025-12-02 | 39.3 | 41.7 | 3.9% |
| 福岡Kスクエア | グローバル・ワン不動産投資法人 | オフィス | 2025-11-07 | 153.6 | 153.6 | 3.4% |
| &HOTEL HAKATA | — | ホテル | — | 38.0 | 50.8 | 4.0% |
| アクシオン大手門プレミアム | 福岡リート投資法人 | 住宅 | 2025-03-28 | 18.0 | 18.1 | 3.4% |
| ヒルトン福岡シーホーク | ジャパン・ホテル・リート投資法人 | ホテル | 2025-02-21 | 643.5 | 717.0 | 4.3% |
| ネストホテル博多駅前 | いちごホテルリート投資法人 | ホテル | 2025-02-04 | 65.0 | 65.8 | 4.1% |
| ザ・ワンファイブマリン福岡 | いちごホテルリート投資法人 | ホテル | 2025-01-10 | 26.0 | 26.1 | 4.2% |
| 富士ソフト新福岡ビル | — | オフィス | — | — | — | 3.9% |
| レソラサウステラス | ユナイテッド・アーバン投資法人 | 商業施設 | — | — | — | 3.6% |
| seven x seven 糸島 | — | ホテル | — | — | — | 4.9% |
| キテラタウン福岡長浜 | KDX不動産投資法人 | 商業施設 | 2023-11-01 | — | 60.8 | 4.2% |
出典:各投資法人の公表資料(資産の取得に関するお知らせ等)より当事務所集計。「—」は公表資料で確認できていない項目
2025年にはヒルトン福岡シーホーク(取得価格643.5億円、CR4.3%)や福岡Kスクエア(153.6億円、CR3.4%)など大型の取引が続きました。ホテルはCR3.9〜4.2%、オフィス・住宅は3.4%前後での評価が多く、金利上昇局面でも福岡の物件への投資意欲は底堅いといえます。
今後の見通し
・人口増加と交通利便性の高いエリアの土地需要は依然として強く、地価・家賃とも当面は上昇基調が続くと考えられます。
・一方、住宅ローン金利の上昇と建築費の高騰により、購入者の負担は増しています。割高感のある物件では価格調整の動きもみられます。
・東京・大阪では上昇幅が拡大し、福岡市は2年連続で縮小しました。今後は「伸び率トップ」から「安定的な上昇」へ移る局面といえます。
・家賃は新規の募集家賃の上昇が先行しており、既存契約の家賃改定では、市場賃料との差をどう評価するかが重要になります。
地代・家賃の適正化、不動産の評価のご相談
上銘不動産鑑定士事務所(福岡県知事第(1)-347号)では、家賃・地代の改定や担保評価など、不動産鑑定のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。
本資料は公表資料に基づき、上銘不動産鑑定士事務所が作成したものであり、無断転載を禁止いたします。数値は各資料の公表時点のものです。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
この記事の執筆者

不動産鑑定士 上銘 隆佑
Ryusuke Joumei
上銘不動産鑑定士事務所 代表。
大和不動産鑑定株式会社 東京本社に2014年に入社後、2019年に不動産鑑定士登録(第10401号)。国内系不動産アセットマネジメント会社への出向を経て、大和不動産鑑定株式会社九州支社へ赴任。2024年に同社を退職し、上銘不動産鑑定士事務所を開所。
適正家賃、関係者間売買、証券化対象不動産、銀行の担保不動産、公有地の売買に係る不動産鑑定評価を中心に、不動産鑑定評価に携わる。
不動産鑑定業 福岡県知事 第(1)-347号
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