【解説】地価で見る佐賀県│令和7年も地価好調。基山町、鳥栖市、佐賀市が地価を牽引。商業地は大財エリアの上昇が目立つ(R7地価公示)

不動産鑑定士の写真

【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

佐賀県全体でみる地価の傾向と背景

令和7年の地価公示において、佐賀県の地価は住宅地・商業地・工業地いずれも堅調な上昇を示しました。

住宅地は7年連続、商業地は4年連続、工業地は9年連続での上昇です。

全体的に言えば、利便性や住環境の良いエリアを中心に、確実に需要が続いている印象です。

実際、県全体の平均変動率を見てみると、住宅地は+2.2%、商業地は+3.4%、工業地は+11.0%と、前年よりも上昇率が拡大しました。

上昇率の大きい地点がいくつも見られたこと、そして横ばいに転じる地点が増えたことが、地価の底堅さを示しています。

特に住宅地や商業地では、相対的に価格水準が高めのエリアでの上昇が目立ち、県全体の平均価格を押し上げています。

景気自体は横ばいながら、県内でも「ここなら住みたい・出店したい」と思わせるようなエリアにはしっかりと需要がついてきているのが特徴です。

住宅地:基山町・鳥栖市・佐賀市がけん引役に

基山町が県内トップの上昇率を記録

住宅地の平均変動率は+2.2%と、前年(+1.7%)より上昇率が拡大しました。

なかでも注目なのが基山町で、+5.2%と県内トップの上昇率を記録しています。

基山町は福岡都市圏との境に位置しており、JR鹿児島本線や九州自動車道の利便性が高いエリアです。

実際に、福岡市や久留米市へ通勤通学する層のベッドタウンとしての人気が高まっており、戸建住宅需要が着実に増えてきています。

価格水準としてもまだ手の届く範囲にあるため、「ちょっと郊外でも良いから環境が良くて通える場所に住みたい」という層の支持を受けていると感じます。

鳥栖市は福岡圏と地元産業の両にらみで好調

鳥栖市も+3.7%と高い上昇率です。

こちらも福岡都市圏へのアクセスの良さがポイントですが、それに加えて地元の工業団地や物流拠点としての機能も強化されていることが要因です。

特に鳥栖JCTを中心とした交通の結節点としての役割が大きく、企業にとっても「動きやすい街」というイメージが定着しつつあります。

こうした動きが住宅地にも波及しており、分譲住宅地や宅地開発の動きが活発になってきています。

佐賀市は市街地拡張と再開発が評価に

佐賀市の住宅地も+3.5%と安定した伸びを示しました。

佐賀駅周辺を中心にした都市機能の整備や、兵庫・本庄といった住宅地としての人気エリアの評価が引き続き地価を押し上げている状況です。

特に上昇率が最も高かった地点は本庄町の一角で、+9.8%という顕著な上昇を記録しています。

郊外の一戸建て志向の強い地域ではありますが、市中心部へのアクセスがしやすく、インフラ整備が進んだことが後押しとなりました。

一方でマイナス変動も

ただし、県内全域で住宅地が上がっているわけではありません。

多久市・神埼市・有田町などでは、▲0.5〜▲0.6%とわずかながら下落しています。

これは人口減少や高齢化の影響による住宅需要の減少と考えられます。

特に西部の有田町では、標準地で最大-2.4%の下落を記録した地点もあり、今後の地域振興施策が重要になると感じます。

商業地:佐賀市の大財エリアが牽引

佐賀駅前と大財エリアが価格上昇をけん引

商業地の県全体の平均変動率は+3.4%で、前年(+2.7%)を上回る結果となりました。

特に目立ったのが佐賀市内の動きです。市全体では+9.0%と他地域を大きく引き離し、佐賀県の商業地の上昇を牽引しています。

とりわけ「大財3丁目」エリアの標準地は+19.8%という高い上昇率を記録しました。

これは佐賀市中心部から西に広がるエリアで、商業施設や医療機関などが集積し、生活利便性が非常に高い地域です。

また、佐賀駅前中央の商業地は、1平方メートルあたり297,000円/㎡と19年連続で県内最高価格を維持しており、利便性とブランド力の両方が価格に反映されています。

鳥栖市も堅調、みやき町もわずかながら上昇

鳥栖市も+6.2%と高い上昇率を記録しました。

特に駅周辺の開発や、ロードサイド店舗の増加が影響しているとみられます。交通利便性の高さが商業施設にとってもメリットとなっており、周辺地価にもポジティブな影響が及んでいます。

みやき町は+0.4%とわずかながらの上昇ですが、横ばいからのプラス転換という意味では評価できます。

今後、町内での商業機能整備が進めば、さらなる上昇の可能性もあるでしょう。

一部ではマイナス変動も

一方で、神埼市では-5.7%と大きめの下落を記録し、武雄市や有田町でも小幅な下落となりました。

こうした地域では中心市街地の空洞化や、旧来型の店舗立地が時代に合わなくなってきている面もあり、再生のための取り組みが求められます。

工業地:佐賀県の安定成長を象徴するカテゴリー

県全体で+11.0%、9年連続の上昇

工業地の対前年平均変動率は+11.0%で、県内用途別で最も高い上昇率となりました。

これで9年連続の上昇です。上昇の背景には、鳥栖市や基山町といった福岡都市圏と連携した立地性の良さに加え、地元企業の工場用地需要の回復もあります。

また、最近では熊本県に進出したTSMC(台湾積体電路製造)の影響で、九州北部にも半導体関連の裾野産業が波及しており、それが佐賀県の工業団地への関心にもつながってきていると感じます。

工業地は限定的だが、価格に勢いあり

佐賀県内には調査対象となる工業地が3地点しかないため、統計としてのサンプル数は少ないものの、そのすべてが上昇という結果です。

これはたまたまではなく、佐賀県内の工業地の価値が再評価されてきている証拠だと考えています。

鳥栖市や基山町のインター周辺では、企業誘致や物流施設の開発も進んでおり、今後も投資家や企業の関心が続く可能性があります。

総評:福岡都市圏との距離が佐賀県の地価を支える鍵に

令和7年の佐賀県における地価動向を総括すると、「福岡都市圏との近接性」をうまく活かしている地域が、住宅地・商業地・工業地いずれにおいても上昇をリードしているという印象です。

住宅地であれば基山町や鳥栖市、商業地であれば佐賀駅前・大財、工業地では福岡方面へのアクセスに優れたエリア(鳥栖・基山)が特に顕著でした。

一方で、人口減少や高齢化の進行が進む地域では、引き続き地価の下押し圧力が存在しており、エリア間での「差」がより鮮明になってきているともいえます。

今後、佐賀県全体として地価の安定上昇を継続していくためには、都市機能の強化、移住者・企業誘致の仕掛け、交通利便性の更なる向上といった、各市町の施策がより一層重要と思います。

福岡に住んでいると、佐賀県鳥栖市・基山町の近さを肌で感じます。

高速で久留米に向かうまでに、鳥栖市に先に入るため、毎回交通利便性がかなりいいなと思っています。そして、基山の丸幸ラーメンには度々お世話になっています。

福岡市内の地価高騰により、需要が周辺に波及していくはずなので、佐賀県内の地価も継続して観察していきます!


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

コメント

コメントする

目次