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【調査】W Osakaのセキュリティトークンは買いか?利回り2.5%の裏側にある「鑑定評価」の妥当性をプロがジャッジ

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表


2025年現在、不動産投資の新しい形として急速に普及している「不動産セキュリティトークン(ST)」。

中でも市場の注目を集めたのが、ケネディクス・リアルティ・トークンによる「W Osaka(ダブリュー・オオサカ)」の証券化案件です。

世界的ホテルチェーン・マリオット系列のラグジュアリー・ライフスタイルホテルであり、そのスタイリッシュな黒い外観は大阪・御堂筋のランドマークとなっています。

個人投資家からは「あのWホテルのオーナーになれる」というブランド力や、予想分配金利回りの高さ(実績ベースで年率4%超など※)で人気を博していますが、私たち不動産鑑定士が見るポイントは少し違います。

「ブランド料で価格が吊り上げられているのではないか?」
「インバウンド絶好調の今の数字は、果たして今後も続くのか?」
「鑑定評価額におけるキャップレート(還元利回り)は適正なのか?」

本記事では、目論見書や公表データを基に、W Osaka STの資産価値とリスクを「不動産鑑定士の視点」から徹底解説します。

※利回りは運用期間や実績により変動します。

目次

1. なぜ「W Osaka」なのか?立地の希少性を鑑定する

不動産評価において、何よりも優先されるのが「立地(Location)」です。W Osakaの評価額を支えているのは、建物(上物)の豪華さ以上に、その土地のポテンシャルにあります。

御堂筋沿いという「聖域」

W Osakaが位置する大阪市中央区南船場は、大阪のメインストリート・御堂筋に面しています。

鑑定実務において、このエリアは以下のような特徴から「極めて資産価値が落ちにくい(下値抵抗力が強い)」と評価されます。

  • 希少性: 御堂筋沿いで、ホテル一棟が建築可能なまとまった規模の土地は極めて限定的です。
  • 用途地域の強度: 商業地域であり、容積率が非常に高く設定されています。つまり、土地一坪あたりが生み出せる収益の天井が高いということです。

投資家心理としては「Wホテルだから欲しい」となりがちですが、プロの視点では「仮にホテルブランドが変わったとしても、この立地なら収益を生み出し続ける」という土地の底堅さこそが、本案件の最大の担保力であると言えます。

2. 利回り2.5%の正体と「変動賃料」の仕組み

都心の一等地に建つ築浅のラグジュアリーホテル。

通常、こうした「スーパープライム資産」はリスクが低いため、利回りは3%台、あるいはそれ以下に落ち着くのが不動産市場のセオリーです。

しかし、本STが高い利回りを提示できている背景には、「賃料スキーム」の工夫があります。

固定賃料と変動賃料のハイブリッド

W Osaka STの裏付けとなる賃料収入は、以下の2階建て構造になっています。

  1. 固定賃料: 最低限保証されるベース賃料(ダウンサイドリスクの防御)
  2. 変動賃料: ホテルのGOP(営業粗利益)に連動する成果報酬型賃料(アップサイドの追求)

鑑定評価のDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)で収益価格を算出する際、この「変動賃料」をどう予測するかが最大の争点となります。

2025年の大阪は、関西万博の開催や、将来的なIR(統合型リゾート)への期待感から、インバウンド需要が爆発的に伸びています。

「客室単価(ADR)」の上昇力がカギ

ビジネスホテルと異なり、W Osakaのようなラグジュアリーホテルは、稼働率だけでなく「客室単価(ADR)」を青天井に引き上げることができます。

円安効果もあり、海外富裕層にとって今の日本のホテル代は割安です。1泊10万円、20万円でも予約が入る現状において、売上がダイレクトに配当原資(変動賃料)に跳ね返ってくるこのスキームは、インフレ時代に最も強い投資形態と言えるでしょう。

3. 建物評価:安藤忠雄氏監修と「物理的寿命」

投資対象として見る際、建物の「質」も見逃せません。

W Osakaは世界的建築家・安藤忠雄氏がデザイン監修を務めています。不動産鑑定士として建物を観察する際、デザイン性は単なる見た目ではなく「経済的価値(超過収益力)」として評価します。

  • 競争優位性: 唯一無二のデザインは、競合ホテルとの差別化要因となり、将来にわたって高いADRを維持する根拠となります。
  • 築浅のメリット: 2021年開業であり、建物としての物理的寿命が非常に長く残っています。STの運用期間中(数年程度)に、突発的な設備更新や大規模修繕が発生するリスクは極めて低く、これは「キャッシュフローの安定性」に直結します。

古いオフィスビルなどの再生案件STでは、予期せぬ修繕費で配当が削られるリスクがありますが、本案件に関してはその懸念は最小限と言えます。

4. リスク分析:鑑定士が見る「死角」とは?

ここまでメリットを並べましたが、プロとしてリスクにも触れておく必要があります。
最大の焦点は「出口戦略(エグジット)」「鑑定評価額の変動」です。

マーケットの過熱感と反動

現在の鑑定評価額は、インバウンド好況と万博特需を織り込んだ「強気」の数字である可能性があります。

運用終了時(物件売却時)に、万が一、パンデミックのような事態で観光需要が蒸発していれば、変動賃料はなくなり、物件価格(キャピタルバリュー)も下落します。

その場合、元本割れのリスクはゼロではありません。

しかし、W Osakaのような「トロフィー・アセット(誰もが欲しがる優良資産)」は、国内だけでなく世界中のファンドが買い手候補となります。

「大阪・御堂筋のランドマーク」という希少性が、市況悪化時の価格下落に対する強力なクッション(防波堤)として機能すると私は見ています。

5. 結論:W Osaka STは「買い」なのか?上銘鑑定の目線

総括すると、W Osakaのセキュリティトークンは、以下のような投資家に適した商品と評価できます。

  • インフレヘッジをしたい人: 物価上昇に伴ってホテル単価も上がるため、現金の価値目減りを防げる。
  • 「大阪の成長」に投資したい人: 万博後のIRを含む関西経済圏の拡大を信じるなら、キャピタルゲイン(売却益)も狙える。

単に「利回りが良いから」と飛びつくのではなく、「なぜその利回りが出るのか(変動賃料のリスクとリターン)」、そして「裏付けとなる不動産の価値(立地の強さ)」を理解して投資することが重要です。

不動産セキュリティトークンは、J-REITよりも個別の物件特性がダイレクトに反映される金融商品です。

もし、検討中のST案件や、保有されている収益物件について「目論見書の数字は適正か?」「隠れたリスクはないか?」と不安を感じられた際は、セカンドオピニオンとして不動産鑑定士にご相談ください。

数字の裏側にある、不動産のリアルな実力を診断いたします。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。

この記事の執筆者

活動写真

不動産鑑定士 上銘 隆佑
Ryusuke Joumei

上銘不動産鑑定士事務所代表。
大和不動産鑑定株式会社東京本社に入社し、2019年に不動産鑑定士登録(第10401号)。国内系不動産アセットマネジメント会社への出向を経て、大和不動産鑑定株式会社九州支社へ赴任。
適正家賃、関係者間売買、証券化対象不動産、銀行の担保不動産、公有地の売買に係る不動産鑑定評価を中心に、不動産鑑定評価に携わる。
不動産鑑定業 福岡県知事 第(1)-347号

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