
不動産鑑定士の視点から、今回は霞ヶ関ホテルリート投資法人が保有するホテル全15物件の収益性を一覧で整理しました。
近年は建築費の高騰や人件費の上昇により、ホテル運営の収益性は厳しくなっていると言われる一方で、ADR(1日あたり客室単価)が回復傾向にあり、利回り水準も底堅く推移しています。

そのなかで、ホテルに特化したリートの収益構造を読み解くことは、今後の投資判断やホテル不動産の鑑定評価にも役立ちます。
物件一覧と鑑定NOI利回り
以下の表は、霞ヶ関ホテルリート投資法人が保有する全15物件について、取得年月日、客室数、取得価格、鑑定NOI利回り、築年数を整理したものです。
築年数が浅く、平均の鑑定NOI利回りが5.8%確保されています。
また、seven x seven 石垣が取得額187億円と圧倒的な規模感というのが分かります。
No | 物件名 | 取得年月 | 客室数 | 取得価格 | 鑑定NOI利回り | 築年数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | fav 高松 | 2020年11月 | 41室 | 1,410百万円 | 5.9% | 5.0年 |
2 | fav 飛騨高山 | 2020年10月 | 38室 | 1,080百万円 | 7.8% | 4.8年 |
3 | fav 伊勢 | 2021年12月 | 36室 | 1,740百万円 | 6.4% | 3.8年 |
4 | fav 熊本 | 2021年11月 | 67室 | 2,720百万円 | 5.7% | 3.8年 |
5 | fav 広島スタジアム | 2022年8月 | 33室 | 1,360百万円 | 5.7% | 3.1年 |
6 | fav 函館 | 2022年8月 | 30室 | 1,360百万円 | 6.5% | 3.0年 |
7 | fav 東京西日暮里 | 2022年12月 | 24室 | 1,710百万円 | 5.2% | 2.8年 |
8 | fav 広島平和大通り | 2022年12月 | 51室 | 2,010百万円 | 6.0% | 2.8年 |
9 | fav 鹿児島中央 | 2022年11月 | 51室 | 1,360百万円 | 7.9% | 2.8年 |
10 | fav 東京両国 | 2023年3月 | 19室 | 1,550百万円 | 5.1% | 2.6年 |
11 | FAV LUX 飛騨高山 | 2023年8月 | 53室 | 2,300百万円 | 6.0% | 2.0年 |
12 | seven x seven 糸島 | 2024年4月 | 47室 | 5,230百万円 | 5.8% | 1.8年 |
13 | FAV LUX 長崎 | 2024年2月 | 52室 | 3,300百万円 | 5.5% | 1.6年 |
14 | seven x seven 石垣 | 2024年9月 | 121室 | 18,700百万円 | 5.6% | 1.1年 |
15 | FAV LUX 鹿児島天文館 | 2024年12月 | 63室 | 3,380百万円 | 5.5% | 0.8年 |
合計/平均 | 49,210百万円 | 5.8% | 2.0年 |
収益性と各物件の評価額の妥当性
霞ヶ関ホテルリート投資法人の利回りは全体平均で5.8%となっており、国内のホテル系リートの中では比較的高水準です。
地方中核都市に展開するfavシリーズは、土地取得コストが抑えられている分、投資利回りの確保がしやすい構造になっていると考えられます。
さらに、各物件の評価額自体はどうか、検証してみました。

「一坪当たりの専有単価」は、取得価額÷専有面積で求められます。土地代も乗っているので、都心部ほど高くなり、郊外は専有単価が低くなる傾向にあります。
東京所在の「西日暮里」と「両国」が専有単価の2TOPです。
旗艦物件の「石垣」は郊外所在で土地が安いため、単価はマイルドです。それでも専有単価3,600,000円/坪と、収益性の面で非常に高い評価が付いています。
今後の注目ポイント
- 多人数旅行の増加に伴うADR・売上の増加
- 建築費・人件費のさらなる上昇が与えるキャッシュフローへの影響
- 新ブランドの運営安定性と稼働率推移
- 新規取得のNOI利回りについて
以上を踏まえると、霞ヶ関ホテルリート投資法人のポートフォリオは、地方都市の強みを活かした比較的安定性のある構成になっており、利回り水準でも競争力があると言えます。
引き続き、取得価格と収益性の関係、築年数とのバランスなどを注視していくことで、ホテルリート市場全体の健全性を読み解く参考となるでしょう。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑
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