
令和7年地価公示において、沖縄県の住宅地の地価は全体として大きく上昇しました。
県平均で前年の+5.5%から+7.3%へと上昇幅をさらに拡大しており、全国的に見ても注目度の高い動きとなっています。
全21市町村すべてで住宅地が上昇したことは、県全体の底堅い住宅需要と将来性を示すものです。
今回は、沖縄県内の住宅地における地価動向について、不動産鑑定士の視点から地域ごとの特徴や上昇要因を読み解いていきます。
沖縄県全体の住宅地動向
今回の地価公示では、沖縄県内の全市町村で住宅地が上昇しました
。特に、11市と9町村においては、前年よりも上昇幅が拡大しており、経済全体の底上げと連動するかたちで、不動産市場の勢いも感じられます。
こうした上昇には、複数の要因が考えられます。
① 木造戸建住宅の普及と需要
全国的に建築費の高騰が続く中でも、沖縄では木造戸建住宅の人気が根強く、地元住民だけでなく県外からの移住者にも支持され続けています。
もちろん販売価格が高止まりしているため、エリアによっては売れ行きに若干の陰りも見られますが、それでも木造住宅を中心とした需要は底堅い状況が続いています。
② 那覇市の住宅需要と周辺市町村への波及
県庁所在地である那覇市は、地価の面でも住宅需要の中心です。
特に市中心部の新都心エリアでは分譲マンション用地の争奪戦が続いており、物件供給が限定的な中で高価格帯の取引が見られます。
その需要は、那覇市の外縁部や浦添市、宜野湾市、豊見城市などの周辺市町村にも波及しており、那覇市と同様に地価が上昇しているエリアも多く見られます。
③ 富裕層の別荘・移住需要
本島中南部や北部の海岸エリア、離島エリアでは、移住需要や別荘需要も旺盛です。
特に宮古島市や石垣市などでは、県内外の富裕層による購入意欲が依然として高く、観光地としての知名度とあいまって住宅地の地価上昇が顕著です。
本土からの移住者にとって、沖縄は「暮らす場所」としても注目されており、こうしたライフスタイル志向の変化も地価に反映されていると考えられます。
那覇市:住宅需要の中心地としての地価上昇
住宅地における県内最高価格地点は、那覇市銘苅(めかる)に所在する地点(那覇-19)で、1㎡あたり433,000円(前年比+5.1%)を記録しました。
ここは天久新都心公園の北側に位置するエリアで、マンション素地としての需要が極めて強く、物件供給も限られていることから、継続して高水準の地価を維持しつつ、上昇傾向が続いています。
また、新都心エリアでは現在も新築マンションの建設が進められており、今後も高値圏の維持が予想されます。
加えて、市内のほかの住宅地でも住宅需要の強さは続いており、マンション需要や戸建用地の取得が活発です。
宮古島市:離島エリアの中でも群を抜く上昇率
地価変動率で最も高かったのは、宮古島市上野字野原の地点(宮古島-6)で、+23.1%の上昇となりました。
前年(R6年)の+21.2%に続き、2年連続で極めて高い上昇率を記録しています。
この地域は、陸上自衛隊宮古島駐屯地の西側に位置しており、農地や農家住宅が混在する地域ですが、近年は空港南側に大型商業施設「サンエー宮古島シティ」が開業し、利便性が格段に向上。
これにより周辺の土地取引が活発化し、住宅需要も高まりました。
さらに、観光客や移住希望者の増加を受け、空港からアクセスの良いエリアでは別荘用地としての需要も強く、価格を押し上げる要因となっています。
石垣市:中心部での住宅需要が高まり、複数地点で二桁上昇
今回の公示では、宮古島に続き、石垣市でも複数の地点で非常に高い上昇率が記録されました。具体的には以下のような動きが見られます。
- 石垣-3(字平得):+20.3%(前年:+11.9%)
- 石垣-2(字新川):+19.3%(前年:+12.5%)
- 石垣-1(字登野城):+18.6%(前年:+12.0%)
これらの地点はいずれも既成の住宅地でありながら、小学校や商業施設に近接するなど生活利便性が高く、新築木造住宅の供給や中古住宅の購入希望が多いエリアです。
住宅需要が着実に増えており、特にファミリー層や県外からの移住者の関心が高まっている点が特徴です。
石垣市全体としても、インバウンド回復とリゾート開発の動きが相まって、今後も地価の堅調な推移が期待されます。
今後の見通しと注目点
今回の地価公示から見えてくるのは、沖縄県における住宅地の地価上昇が「一部地域だけの現象」ではなく、県全域に広がっているという点です。
那覇市の需要が周辺地域に波及し、さらに離島エリアにおける別荘・移住需要が後押しとなり、地価が押し上げられています。
ただし、注意すべき点としては以下の2つが挙げられます。
- 建築費の高騰と販売価格の高止まり
建築費が高騰している中で住宅価格が高止まりしており、今後の取引動向次第では一部地域で需要の一服感が出る可能性があります。 - インフラ整備や地域政策の影響
今後も引き続き県内各地でインフラ整備や開発計画が進むことが予想されており、その内容によって地価動向に差が生じる可能性があります。とくにリゾート地域では法規制や環境保護の観点から慎重な開発判断が求められる場面も増えていくでしょう。
おわりに│那覇市の需要が周辺に波及。富裕層からの別荘需要にも注目。
沖縄県の住宅地における地価上昇は、観光地・リゾート地としての強みと、那覇市を中心とした生活・仕事の拠点としての利便性が共存している点にあります。
今後も住宅需要は堅調に推移すると見られますが、その一方で建築コストや供給制限などの課題にも目を向けておく必要があります。
不動産鑑定士として、こうした地価の動きには今後も注目していきたいと思います。
以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑
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