2025年7月基準地価が発表│福岡市は東京23区に次ぐ上昇率を記録(住宅地)

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【執筆・監修】不動産鑑定士 上銘 隆佑
上銘不動産鑑定士事務所 代表

目次

基準地価発表、地価の上昇が継続

2025年7月、国土交通省から令和7年基準地価が発表されました。

不動産鑑定士として、この数字は単なるデータの羅列ではなく「地域ごとの勢い」として捉えています。

基準地価とは、都道府県が毎年7月1日時点の土地の価格を調査・公表するもので、公示地価と並ぶ公的な地価指標です。

今年の基準地価は、全国的に上昇基調が継続しています。

これは、日本経済全体がデフレからの脱却を着実に進めていること、そして賃金上昇や人口動態、企業の進出といった構造的な変化が地価に反映されていることを示しています。

R7地価調査
国土交通省資料より

これまでの日本の不動産市場は、「東京一極集中」や「都心部と地方の二極化」が叫ばれてきました。

しかし、地方圏の主要都市や、新幹線・高速道路のアクセスが良い地域では、利便性の向上に加え、テレワークの普及による居住地の選択肢の多様化、そしてインバウンド需要の回復が複合的に作用し、地価を押し上げています。

注目すべき三大都市の変動率│東京、福岡、大阪の住宅地を徹底比較

今年の基準地価で特に注目すべきは、三大都市圏における住宅地の変動率です。

中でも、東京23区、福岡市、大阪市の3都市は、それぞれ異なる背景を持ちながらも、力強い上昇を見せました。

東京23区:+8.3% 圧倒的な需要と供給不足が地価を押し上げる

東京23区は、住宅地において前年を上回る+8.3%という上昇率を記録しました。

この数字は、日本全国の地価上昇を牽引する、「不動産市場の心臓部」としての役割を物語っています。

その背景には、圧倒的な人口流入と富裕層の集中が挙げられます。

依然として、多くの人々が仕事や教育、文化的な生活を求めて東京に集まります。特に、高所得者層の住宅需要は非常に旺盛であり、都心部の高級住宅地やタワーマンションの価格は高止まりしています。

また、都心部では既に多くの土地が開発され尽くしており、新規の供給が限定的です。

需要に対して供給が追いつかない「供給の逼迫」状態が、分譲マンションの価格高騰を招き、価格を押し上げる最大の要因となっています。

福岡市:+7.2% 「FUKUOKA」の成長を映し出す躍進

そして、今回の基準地価で最も輝いた都市の一つが福岡市です。

住宅地の変動率は+7.2%と、東京23区に次ぐ高い上昇率を記録しました。

この数字は、福岡市が単なる地方都市ではなく、日本の成長エンジンの一つであることを証明しています。

なぜ、これほどまでに福岡の地価は上昇しているのでしょうか。

  1. 再開発の進展と企業誘致: 「天神ビッグバン」をはじめ、博多駅周辺やウォーターフロント地区など、市内の至る所で大規模な再開発プロジェクトが進行しています。これにより、都市の機能が向上し、働く場や住む場所としての魅力が高まっています。積極的な企業誘致策も相まって、IT関連企業やスタートアップ企業の集積地となり、高所得な労働者が人口流入しています。
  2. 住みやすさと利便性の両立: 都会的な利便性と、海や山が近い自然環境、そしてコンパクトにまとまった都市構造が、住みやすさとして高い評価を得ています。都心部から少し離れた郊外でも、公共交通機関が発達しているため、職住近接のライフスタイルが実現しやすい点も魅力です。
  3. 分譲マンションの価格高騰: 福岡も東京同様、旺盛な需要に対して供給が追い付かず、分譲マンションの価格高騰が顕著です。特に都心部の物件は、投資目的の購入者も多く、価格の上昇を加速させています。

大阪市:+6.1% 「万博」とインバウンド需要が牽引

大阪市もまた、住宅地で+6.1%という高い上昇率を維持しました。

大阪市の上昇は、2025年に開催される大阪・関西万博が大きな要因として挙げられます。

万博開催に向けて、インフラ整備や再開発が加速しており、周辺地域の地価に好影響を与えています。また、インバウンド需要の爆発的な回復も地価上昇の大きな要因です。

関西国際空港がアジアからの観光客の主要な玄関口として機能しており、投資家は民泊需要を見込んで、住宅地の物件を積極的に購入しています。

不動産鑑定士が読み解く「今後の地価動向」

今回の基準地価の数字は、日本の不動産市場が力強い上昇基調にあることを明確に示しました。

今後の地価動向を読み解く上で、多面的な視点を持つ必要があります。

まず、緩やかな金利上昇の影響です。

日本銀行は、マイナス金利政策を解除し、金融政策の正常化を進めています。今後、緩やかな金利上昇が予想されます。これまで低金利環境が地価を押し上げてきた側面があるため、金利が上昇すれば、住宅ローンの負担が増し、不動産購入のハードルが上がる可能性があります。

次に、人口動態と地域間の差です。

日本の人口は減少傾向にありますが、特定の地域への人口流入は今後も続くと考えられます。

特に、東京、福岡、大阪といった大都市圏や地方の主要都市では、今後も地価が堅調に推移する可能性が高いです。

一方で、人口減少が著しい地方の過疎地では、依然として地価の下落トレンドが継続する可能性もあります。

最後に、再開発と都市の魅力向上です。

福岡市や東京、大阪といった大都市では、今後も大規模な再開発プロジェクトが予定されています。これらのプロジェクトが完成することで、都市の魅力がさらに高まり、地価を押し上げる要因となるでしょう。

まとめ│日本の不動産市場は活況!

2025年7月基準地価は「上昇継続」となりました。

特に、福岡市が東京23区に次ぐ上昇率を記録したことは、嬉しいニュースです。

全国的に、「分譲マンションの価格高騰」が問題となっていますが、これは旺盛な需要の裏返しでもあります。

現状の土地価格の牽引役は、「分譲マンション」「ビジネスホテル」が中心です。

不動産鑑定士として、次なる牽引役に目を配りつつ、市場における不動産取引を注視していきます。


以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
不動産鑑定士 上銘 隆佑

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